薬剤師のためのBasic Evidence(制吐療法) | 日医工株式会社
患者の価値観・好みについてエビデンスに基づく評価はできていないが,嘔吐抑制,悪心抑制という益は多くの患者が求めるものであり,多様性は低いと考えられる。害については少ないと考えられたが,患者のライフスタイルや価値観も考慮すべきである。
[PDF] 選択的NK1受容体拮抗型制吐剤 アプレピタントカプセル
システマティックレビューレポートに基づいて,推奨草案「高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を強く推奨する。」が提示され,推奨決定の協議と投票の結果,23 名中22 名が原案に賛同し,合意形成に至った。
嘔吐抑制,悪心抑制いずれにおいてもオランザピンの追加・併用の有効性が認められた。特に遅発期の悪心・嘔吐抑制における有効性が高いと考えられた。
[PDF] 2016年04月 『抗癌剤の催吐性リスク分類と制吐療法について』
近年,多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンが,高度および中等度リスク抗がん薬による遅発期での悪心・嘔吐のコントロールに有用であるとの報告が多くなされている。わが国においても臨床試験結果が順次報告されており,欧米でのコンセンサスや,臨床的意義から2017 年6 月から標準的制吐療法に併用として使用できるようになった(→, 参照)。遅発性悪心・嘔吐の制御を行うための有効な薬剤としてわが国でのさらなる研究が期待される。
ランダム化比較試験は行われておらず,一般的には軽度リスク・最小度リスク抗がん薬に対して制吐薬は推奨されない(参照)。
(3)シスプラチン誘発嘔吐反応に対するデキサメタゾン及びオンダンセトロン(5-HT3受容体拮抗型制吐剤)との併用効果
高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン)を行う場合,AC 療法においては,デキサメタゾンの投与期間を3~4 日間から1 日目のみに短縮(遅発期である2 日目以降を省略)することを弱く推奨する。その場合,5-HT3 受容体拮抗薬は第2 世代のパロノセトロンを選択することが望ましい。
女性は男性に比べ催吐リスクが高いことが知られている(→参照)。本邦の呼吸器領域と婦人科領域における制吐療法の第II相試験の報告では,同じカルボプラチンを用いても,アプレピタントを含む3剤制吐療法を用いた場合,全期間嘔吐完全制御割合は,呼吸器領域では8割程度であるのに対し,婦人科領域では6割程度であった。また,婦人科領域の悪性腫瘍でカルボプラチンを用いる際に,第1世代5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンのみを用いた群に比べ,これらにアプレピタントを加えた群では,「“食事や水分も摂れない強い悪心”がない」と「5日間嘔吐なし」の割合がそれぞれ有意に高かった。ただし,副次評価項目として制吐効果をみた研究であり,2,3 日目にはデキサメタゾンが用いられていないという制限がある。
注)アプレピタントを使用しない場合は、1日目のデキサメタゾン注射薬
アプレピタントとデキサメタゾンの併用もしくはアプレピタント単独投与の遅発性嘔吐に対する有用性もNCCN ガイドライン2017 や,レビューで示されている。個々の臨床試験では,中等度リスクに対するアプレピタントを含む3 剤の効果をみたランダム化比較試験がある。現在は高度リスクに分類されるAC 療法が約半数含まれている試験であるが,AC 療法以外の中等度リスクにおいても一次評価項目である「5 日間嘔吐なし」の割合が有意にアプレピタント群で高かった。ただし,これはサブグループ解析である点に注意が必要である。わが国でも,二重盲検ではないことに留意する必要があるが,オキサリプラチンベースの抗がん薬を用いる大腸がん症例において,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用療法にアプレピタント/ホスアプレピタントの上乗せ効果を,全期間および遅発期における嘔吐制御割合で証明した第III相ランダム化比較試験(SENRI 試験)の報告がある。さらに,AC 療法を除外した中等度リスク対して第1 世代5-HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロン,1~3 日目),デキサメタゾン(1日目のみ)の2 剤併用群に対してホスアプレピタント併用の効果を見たランダム化比較試験がある。7 割以上の患者においてカルボプラチン,オキサリプラチンを含むレジメンが使用されていた。ここでは対照群のオンダンセトロン(1~3 日目),デキサメタゾン(1日目のみ)の2 剤併用群に比べて,主要評価項目である完全嘔吐制御割合が3剤併用群で有意に高かった(77.1% vs. 66.9%)。
5-HT3受容体拮抗薬もしくはデキサメタゾンとの併用は,各単独療法と効果に差はなく,費用対効果において5-HT3受容体拮抗薬の有用性は疑わしいとされている(パロノセトロンはこの検討に含まれていない)。しかし,肝炎などでデキサメタゾンが使用できない場合は,5-HT3受容体拮抗薬を用いることもある。さらに遅発性嘔吐におけるパロノセトロン単独投与の有用性をdolasetron との比較で明らかにした第III相ランダム化比較試験の結果もあり,遅発性嘔吐に対するパロノセトロン単独使用は,現時点ではオプションの一つと考えられる(なお,ここでいう単独療法とは遅発性嘔吐に対するものであり,急性嘔吐に対する薬物療法に関しては を参照されたい)。5-HT3受容体拮抗薬と副腎皮質ステロイドは制吐効果,QOL 改善効果において同等であると報告した第III相ランダム化比較試験もある。MASCC/ESMO ガイドライン2016,ASCO ガイドライン2017 では,中等度リスク抗がん薬による遅発性嘔吐に対して,前述したパロノセトロンとデキサメタゾンの併用療法が推奨されている(参照)。
合 デキサメタゾン 8mg) + (アプレピタント使用の場合:アプレピタント 80mg Day2,3)
【参照】 2015ASCO 総会で報告された乳がんに対するアントラサイクリン系抗がん薬とシクロホスファミドを含むレジメンに対するデキサメタゾン/ホスアプレピタント併用下でのグラニセトロンとパロノセトロンの比較を行ったわが国の第III相ランダム化比較試験(WJOG6811B 試験)では,主要評価項目である遅発性悪心・嘔吐の完全制御割合において両群間に有意差は認められなかったが,二次評価項目ではパロノセトロン群が遅発期において有意に悪心を抑制した。
また、オンダンセトロン、デキサメタゾンを併用投与した。 注7)本剤の投与は1 ..
CHOP 療法も高度催吐性リスクに分類されている。しかし実臨床では制吐薬として2 剤併用が行われる傾向にある。これは高用量のプレドニゾロンを5 日間投与するため遅発性の悪心嘔吐が低いと考えられているためであり,実際に我が国で行われたCINV 観察研究では,79%で2 剤併用が行われていた。CHOP 療法に対するNK1 受容体拮抗薬の有効性については,1 コース目は2 剤併用を行い,2 コース目からNK1 受容体拮抗薬を上乗せする試験が報告されている。また第2 世代の5-HT3受容体拮抗薬の有効性について検討したいくつかの前向き試験が本邦より報告されている 。2 剤併用,3 剤併用のどちらが良いかについてのランダム化比較試験は,第II相試験での報告しかなく,今後の検討が必要である。
ント群(アプレピタント 80 mg+デキサメタゾン 8 mg、30 名)及びデキサメタ ..
オランザピン10 mg 追加・併用の有用性を検討したランダム化比較試験2 編,をもとに評価した。オランザピン追加・併用群の高血糖発現頻度は,それぞれGrade 3 以上0.5%,Grade 2 以上1.7%と低かった。メタアナリシスでは出版バイアスは認められず,オランザピン非追加・非併用群と有意差はなかった〔RD 0.01(95%CI:-0.01-0.02,p=0.37)〕()。一方,オランザピンの至適用量を検討したランダム化第Ⅱ相比較試験(5 mg と10 mg)では,いずれの群においても高血糖発現はGrade 1 のみで,頻度は5 mg 群5.2%,10 mg 群4.1%と低かった。
(3)シスプラチン誘発嘔吐反応に対するデキサメタゾン及びオンダンセトロン(5-HT3受
本CQ では,高度催吐性リスク抗がん薬による治療を受ける患者を対象に,悪心・嘔吐予防として,4 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン+オランザピン)と3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)を比較した際の「血糖上昇」「嘔吐抑制」「悪心抑制」「有害事象」「コスト(薬剤費)」の5 項目をアウトカムとして設定し,システマティックレビューを行った。
2013)2)、5-HT3 拮抗剤及びデキサメタゾンに対するオランザピン又はアプレピタントの上乗
またMASCC のガイドラインでは,①NK1 受容体拮抗薬を使用しない場合はステロイドを3日間,②NK1 受容体拮抗薬を使用する場合はステロイドを1 日間使用すると謳われているが,①Aapro らの論文では,NK1 受容体拮抗薬を使用しない場合でも,パロノセトロンを併用するという条件下でsteroid sparing が可能であると報告されており,②に関しては,2~3 日目のステロイドは2~3 日目のアプレピタントと同等であるという報告もあり,元となるエビデンスの背景や条件に注意が必要である。本邦におけるsteroid sparing に関する報告でも,パロノセトロン併用下の報告や,アプレピタントとパロノセトロンの2 剤併用下など条件が異なるため留意する必要がある。
したパロノセトロン、アプレピタント及びデキサメタゾン併用制吐療法の有効性及び
高度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法については,前版一部改訂版(ver.2.2)では,NK1 受容体拮抗薬,5-HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3 剤併用療法を推奨グレードA として提示しており,オランザピンの追加・併用については,「本邦における推奨用量,使用方法についてはまだ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる」としていた。一方,NCCN ガイドライン2017,ASCO ガイドライン2017 では,オランザピンを含む4 剤併用療法が推奨として追加された。今回,本邦において実施されたランダム化第Ⅲ相比較試験が報告され,より適正な制吐療法およびそのオプションの提示が必要と考えられ,本CQ を設定した。
① 5-HT3受容体拮抗薬(Day 1)② アプレピタント125 mg(Day 1),80 mg(Day 2〜3)③ デキサメタゾン ..
遅発期に有効なNK1 受容体拮抗薬と,半減期の長い第2 世代5-HT3 受容体拮抗薬であるパロノセトロンの登場により,中等度催吐性リスク抗がん薬を対象に,2 日目以降(遅発期)のデキサメタゾン投与省略の可否を検証した複数のランダム化比較試験が行われ,悪心・嘔吐抑制効果について,1 日目(急性期)投与群の3~4 日間(急性期+遅発期)投与群に対する非劣性が示された。その後,高度催吐性リスク抗がん薬においても遅発期のデキサメタゾン投与省略が検証されたため,本CQ を設定した。
HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下における NK1 受容体拮抗薬(アプレピタントま ..
高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬とNK1 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3 剤併用療法に加えて,オランザピンを追加・併用することを強く推奨する(→ 参照)。ただし,本邦では糖尿病患者へのオランザピン投与は禁忌であるため,糖尿病患者においては従来の3 剤併用療法を行う。
注)アプレピタントを使用しない場合は、1日目のデキサメタゾン注射薬は
アントラサイクリン+シクロホスファミド併用(AC)療法においてアプレピタントを使用しない臨床試験のエビデンスから,2 日目以降のデキサメタゾンの上乗せ効果は証明されていない。さらにステロイドの副作用を減ずる目的で,AC 療法に対する2~3 日目のステロイド使用を行わないsteroid sparing という投与法は,ステロイド通常使用に対する非劣性が海外の第III相ランダム化比較試験で示されている。本邦でも,アプレピタント(またはホスアプレピタント)を併用した第III相試験において,AC療法を含む高度リスク抗がん薬に対するsteroid sparing が可能であることが示された14)。ただし使用された5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンのみであることに留意する必要はある。したがって,AC 療法においては,steroid sparing は選択肢の一つとなる(→ 参照)。
高度(>90%)催吐性リスクの抗がん剤による治療を受ける人が嘔吐・吐き気を予防するために「アロキシ+デキサメタ.
本CQ では,高度催吐性リスク抗がん薬による治療を受ける患者を対象に,デキサメタゾン1 日のみ投与とデキサメタゾン3~4 日間投与を比較した際の「嘔吐抑制」「悪心抑制」「血糖上昇抑制」「骨粗鬆症抑制」の4 項目をアウトカムとして設定し,システマティックレビューを行った。
NK, 受容体拮抗薬: アプレピタントカプセル / ホスアプレピタント注、 ..
今回,推奨の根拠となるエビデンスがない制吐療法については,患者の価値観・好みも考慮のうえ,実臨床で行われている制吐療法について記述した(→ 参照)。