ステロイドの強さに応じて「強力」から「弱い」までランク分けされています。 デキサメタゾン(商品名:リンデロンVなど) – 強力
抗炎症薬として広く用いられている薬ですが、重症感染症や間質性肺炎などの治療にも用いられます。重症肺炎患者さまの死亡率を下げる効果があるとされています。
新聞では解熱剤、酸素、デキサメタゾン 商品名デカドロンを持って往診にいっているという記事を見た。 ..
6月、英国オックスフォード大学が主導した、一般的なステロイド剤である「デキサメタゾン」を新型コロナウイルス患者2000名に投与した臨床試験の結果(最も重症な患者の死亡率低減に効果があった、という発表)は世界から注目を集め、大きく報道されました。
誤解をしないでほしいのですが、デキサメタゾンを普段から飲んでいれば新型コロナウイルスに感染しないとか、感染しても重症にならないということではありません。
必要がないのにステロイドを服用すると副作用の可能性すらあります。
リウマチ患者ではステロイド服用で重症化リスクが上昇しましたが、喘息では吸入ステロイドのためか感染リスクは上昇していませんでした。
ステロイド治療に関しては、医師の診断に基づいた、慎重な対応が求められます。
このほか、複数の国内企業が治療薬候補の年内の承認申請を目指しています。中外製薬が開発した関節リウマチ薬であるアクテムラは、今年6月に米食品医薬品局(FDA)より人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)などを使う重症患者向けのコロナ治療薬として緊急使用許可を取得。日本国内ではすでに治験を完了しており、年内の承認申請を行う運びとなっています。同薬は、過剰な免疫反応を抑制する効果があり、英国の治験では死亡リスクの軽減が認められています。富士フイルム富山化学は開発した抗インフルエンザ薬であるアビガンについて昨年秋に承認申請しましたが、治験の手法の問題などから「有効性の判断は困難」などとして継続審議となっていました。このため、改めて重症化リスクの高い50歳以上の患者を対象に治験を実施し、今秋までに完了する予定です。興和は新型コロナウイルスの増殖を抑える効果や抗炎症作用が確認されている抗寄生虫薬イベルメクチンについて、国内で軽症患者を対象とした治験を行い、年内の承認申請を目指すとしています。更に、7月26日には塩野義製薬が飲み薬タイプの新型コロナウイルス治療薬の臨床試験(治験)を開始したと発表しました。この薬は新型コロナウイルスの増殖に必須の酵素である3CLプロテアーゼを選択的に阻害することでコロナウイルスの増殖を抑制します。治験では健康人を対象に投与し安全性などを検証する予定です。第二段階以降の治験や承認申請の時期は未定としています。
調査は、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補に挙がっている医薬品について、2020年4月1日~今年3月1日の期間に、成分名、商品 ..
スイスの大手製薬会社ロシュ社は、アテア・ファーマシューティカルズ社(アメリカ)と共同で経口薬の「AT-527」の開発を進めてきました。実験的な研究では、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用が確認されていましたが、人での有効性や安全性を評価するために新型コロナウイルス感染症の患者さまを対象とした臨床試験が開始されることになったのです。
新型コロナの中等症から重症を対象とした薬剤としては、3つが承認されていますが、その多くは他の疾患向けに開発された既存薬が転用されています。ギリアド・サイエンシズのレムデシビルはエボラ出血熱の治療薬として開発されたもので、2020年5月に重症患者を対象に特例承認され、今年1月中等症患者にも投与可能となりました。治験では投与開始から14日目までに回復がみられた患者の割合はレムデシビル群が74.4%、標準治療群では59.0%。また、14日時点の死亡率は、レムデシビル群が7.6%、標準治療群では12.5%でした。日医工などが後発品として製造しているデキサメタゾンは重症感染症や間質性肺炎などの治療薬として承認されているステロイド薬で、昨年7月に中等症から重症の患者を対象に審査・承認なしで認定されました。英国の臨床研究では、人工呼吸器が必要な患者の死亡率は標準治療群が約40%だったのに対しデキサメタゾン群は約29%でした。日本イーライリリーのバリシチニブは関節リウマチの薬で、炎症反応に関わるJAK(ヤヌスキナーゼ)酵素を阻害することで症状を抑えるものです。今年4月に中等症から重症の患者を対象に特例承認されました。新型コロナは重症化すると過剰な免疫反応が起こり臓器障害を引き起こす場合がありますが、同薬は免疫異常による炎症を抑制する作用があります。
コロナ治療のステロイド、投与早すぎると症状悪化の恐れ 報告相次ぐ
組換えタンパクワクチンの開発は、米ノババックスが先行。21年6月には、米国などで行った3万人規模のP3試験で90%の発症予防効果が示されたと発表しました。欧州などですでに承認を取得しており、日本では製造と供給を担う武田薬品工業が21年12月に承認申請。仏サノフィと英GSKも共同で組換えタンパクワクチンを開発中で、日本でも21年7月からP3試験が行われています。
2020年の初頭から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)大流行に伴い、この未知のウイルスに対する有効な治療法の開発および探索が世界的に進められてきました。イギリスが国家を挙げて実施した大規模臨床研究では、小容量のステロイドの有効性(本研究では、メチルプレドニゾロン約40㎎に相当)が認められましたが、ステロイドは免疫力低下などの副作用も非常に強い薬剤でもあり、ステロイド・パルス療法(大容量一括ステロイド投与療法)など中容量以上のステロイド治療については返って死亡リスクを上昇させる恐れも懸念されており、適切な投与量・投与方法について専門家の中でも意見が割れていました。この答えのでない原因の大きな一因は、COVID-19に対する治療評価は大きなバイアスが生じやすく、正確な評価そのものが非常に困難であるためです。
[PDF] COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版
新型コロナ感染の約80%を占める軽症の段階から使用できる薬が中外製薬の「ロナプリーブ点滴静注セット300」「同セット1332」(一般名:カシリビマブ及びイムデビマブ)です。今年7月19日に厚生労働省より特例承認されました。最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初となります。同薬はカシリビマブとイムデビマブの2種類のウイルス中和抗体を同時に点滴投与します。新型コロナウイルスは人の細胞と結合し侵入して増殖しますが、「抗体カクテル療法」と呼ばれるこの治療法では、点滴で投与された2種類の抗体がウイルスと結合することで、細胞への侵入を阻止します。その結果、ウイルスの増殖を防ぎ、重症化するリスクを軽減する仕組みです。対象は年齢や肥満、基礎疾患といった重症化リスク因子を有し、酸素投与が不要な軽症から中等症の入院患者。海外の臨床試験では非投与群と比べて入院または死亡リスクを約70%減少させる結果が得られています。また、デルタ株をはじめとする複数の変異株に効果があることが非臨床試験で確認されています。この薬は昨年トランプ前米国大統領がコロナに感染した際に投与され、話題となりました。
イギリスでは世界に先駆けてモルヌピラビルの使用が承認されました。軽症から中等度程度の患者さまのうち、肥満や心臓病などの重症化リスクがある方が対象です。最も高い効果が得られるのは感染が判明してすぐの投与だと考えられており、発症後5日以内の服用が推奨されています。
<レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mg 等)>
日本イーライリリーは4月23日、関節リウマチなどの薬として国内で承認されているヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤「オルミエント錠」(一般名:バリシチニブ)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による肺炎の治療薬として適応追加の承認を取得したと発表した。国内で承認された新型コロナ感染症(COVID-19)治療薬としてはレムデシビル(商品名:ベクルリー)、デキサメタゾン(商品名:デカドロン)に続いて3つ目となる。
機序:レムデシビルはRNAウイルスに対し広く活性を示すRNA依存性RNAポリメラーゼ
これまでの知見によると、レムデシビルは人工呼吸や高流量の酸素投与に至った重症例では効果が期待できない可能性が高いものの、そこまで重症化していない酸素需要のある患者には有効性が期待できる薬剤です。
コロナ治療薬に「デキサメタゾン」…「レムデシビル」に続き2例目
大阪大学大学院医学系研究科の坂庭嶺人助教(社会医学講座公衆衛生学)らのグループは、大容量一括ステロイド静脈投与(ステロイド・パルス療法)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化患者の院内死亡リスク改善に有効であることを明らかにしました。2020年以降、COVID-19に対する様々な有用な治療法の探索が世界的に進められてきました。イギリスの国家を挙げての臨床研究では、小容量のステロイド投与治療の有効性が確認されましたが、一方でステロイドは副作用も非常に強力な薬剤であるため過剰な投与では逆効果で死亡率を上げてしまう可能性も懸念されていました。適切な投与量・投与方法について専門家の間でも意見が割れており、科学的なエビデンスの構築が求められていました。今回、研究グループは、日本全国のCOVID-19入院患者、約67,000人の入院中の治療内容(どのタイミングでどのような治療をどの程度の容量で実施したのか?)、その後の退院・院内死亡状況などを、最新の分析技術を用いて詳細な解析を実施しました。結果、重症化患者ではステロイド・パルス療法は、小容量ステロイド投与やステロイド療法を実施しない場合よりも、有意に致死率を改善することを明らかにしました。COVID-19重症化患者数はいまだ増え続けています。比較的医療費も安価で小規模な病院などでも実施可能なステロイド・パルス療法の有効性が認められた本研究は、今後のCOVID-19の院内死亡者数の改善などに大きな貢献が期待されます。
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の「診療の手引き」に、薬物治療に使える承認薬として、抗炎症薬「デキサメタゾン」を掲載した。
これまでの知見によると、レムデシビルは人工呼吸や高流量の酸素投与に至った重症例では効果が期待できない可能性が高いものの、そこまで重症化していない酸素需要のある患者には有効性が期待できる薬剤です。
なお、モノクローナル抗体療法を受けた場合は、薬剤投与後90日の間隔を空けて新型コロナワクチンを接種する。 ..
調査は、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補に挙がっている医薬品について、2020年4月1日~今年3月1日の期間に、成分名、商品名、個人輸入をキーワードに、検索エンジン「グーグルジャパン」を活用して情報収集したもの。調査時点で、国内で承認されているのは、抗ウイルス剤「レムデシビル」と抗炎症剤「デキサメタゾン」の2剤である。
[PDF] 新型コロナウイルス感染症に対して使用される代表的な薬剤
金沢大学の木村和子特任教授、吉田直子助教らが、インターネットにおける新型コロナウイルス感染症治療薬の国内流通実態を調査したところ、治療薬候補に挙がっている複数の医薬品が「新型コロナウイルス感染症治療薬」として販売されていたことが判明。そのうち7品目では、新型コロナウイルス感染症治療薬としての広告が行われていました。現時点で、国内で承認されているのは、抗ウイルス剤「レムデシビル」と抗炎症剤「デキサメタゾン」の2剤のみ。木村氏は注意喚起の警鐘を鳴らしています。
・チキサゲビマブ/シルガビマブ(筋肉注射薬、商品名:エバシェルド筋注セット) ..
22 COVID-19患者の増加期には、宿泊療養施設への入所も急増する。自治体により対応は多少異なると思うが、多くの自治体で宿泊療養施設には医師会もしくは病院からの派遣医師が関与しているのではないかと思われる。自宅療養中の患者が増加するにつれ、保健所と協力しながら、往診体制が構築された地域もあるだろう。そこでは災害の避難所のように、さまざまな規模の医療機関が役割分担を行い、COVID-19診療に当たっておられることと思う。本稿執筆時点(2021年10月初旬)では、いわゆる第5波は沈静化したが、今後第6波が生じる可能性はある。その際には、宿泊療養施設には、やはり一定の役割が期待されるだろう。また、臨時医療施設として運用している施設もあれば、 往診チームが各所属施設から医薬品を持参している施設もあろうかと思う。筆者の勤務する病院では、第4~5波において内科医が宿泊療養施設の診療を部分的に担当し、往診を行っていた。その経験を踏まえ、普段COVID-19診療に携わっていない方が宿泊療養施設などで診療を行うのに役立てていただきたいと考え、本稿を作成した。なお、本稿は個人の見解であり、所属病院やIDATENの見解を述べたものではない。COVID-19患者がどの程度まで増悪すれば病院で診るのかというのは、パンデミックにおける一つの重要な命題である。基本的には、日本の定義[1]でいうところの中等症IIからは酸素投与が必要になるため絶対的に入院適応があり、従来であれば「酸素投与=デキサメタゾン開始=入院」が医療的な原則なのであるが、病床確保が困難になるにつれ在宅や宿泊療養施設での療養者が増える。結果として一部の増悪する患者に酸素投与が必要なケースが出てしまう(図)。COVID-19の治療薬は急速なスピードでの開発とそれに引き続く臨床試験が行われ、新たな知見がこれまでにない速さで加わってきた。現時点で、信頼のおけるガイドライン等により入院以外の状況で治療薬として推奨されるものは以下になる(表1)[1、2]。発症時の重症化予防薬としては最も有効である。バムラニビマブ/エテセビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブという3種類のモノクローナル製剤があるが、日本ではカシリビマブ/イムデビマブが2021年7月に承認された。発症から7日以内にモノクローナル抗体を投与した場合、非使用群に対するウイルス量が減少していた。のみならず、28日以内のCOVID-19に関連した入院や救急外来/一般外来/遠隔外来の受診が、プラセボに比べて70%減少するという臨床的なアウトカムも示されている。副反応については、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症は確認されず、インフュージョンリアクションが0.2%と記載されている[3]。これまでの報告からは、安全性は高いと考えるべきだろう。カシリビマブ/イムデビマブ各600mgずつ投与するが、日本で使用可能な製剤が2人分(各1200mg)で、冷蔵保管された場合は48時間以内に投与する必要がある。日本における投与対象は、COVID-19の重症化リスクを有する患者群(表2)となる。妊婦に関しては、添付文書に記載はないが、特に妊娠後期はCOVID-19重症化のリスク因子である。これまでのモノクローナル抗体の研究において妊婦に関する情報はないが、一般にIgG製剤は妊婦にも安全に使用されることから、NIHのガイドライン[2]では使用は考慮されるべきであると記載している。筆者の勤務する病院では、本人の承諾があれば投与を行っている。ただし、投与方法と投与場所が大きな問題となっている。そもそもモノクローナル抗体療法は外来で投与し、入院が必要な重症例を減らすことを目的とした薬剤である。日本の添付文書では、外来もしくは宿泊療養施設での投与が認められている。経静脈投与が一般的だが、海外同様、皮下投与も使用が認められそうである。とはいえ、皮下投与は2.5mLを2.5cm以上離れた4か所に接種する方法であり、日本の患者に受け入れられるかどうかについては若干の不安が残る。投与後1時間は副反応の発生などを確認するために観察が必要で、かつ投与後24時間は不測の事態に対応できる体制が必要とされている。ソトロビマブは、SARS-CoV-2に対するモノクローナル製剤の一つである。重症化リスクのある軽症から中等症のCOVID-19患者について、ソトロビマブ投与群とプラセボ群で29日までの入院または死亡をエンドポイントとして比較したRCT(COMET-ICE試験)では、介入群で85%の相対リスク減少を認めた[4]。デルタ株などのVOC(variant of concern)に対する活性は保たれていた。米国では5月下旬に緊急承認され、日本では9月27日に承認された。ソトロビマブ500mgを経静脈的に投与する。投与対象、投与後の観察は、カシリビマブ/イムデビマブと同じである(表2)。なお、モノクローナル抗体療法を受けた場合は、薬剤投与後90日の間隔を空けて新型コロナワクチンを接種する。これは、抗体投与が免疫反応を阻害する可能性を考慮した予防的な対策である。また、新型コロナワクチンを接種していても、非接種者と同様にモノクローナル抗体療法の適応が考慮されるべきである。入院中の酸素投与が必要な患者に対するデキサメタゾンの投与は死亡率を低下させた(RECOVERY試験[4])ため、このような患者にはデキサメタゾン6mg、10日間(退院するまで)の投与を行う。酸素投与を行う必要がない場合のデキサメタゾン(6mg、10日間)の使用は、むしろ害の方が大きい可能性が同時に示されており、使用すべきではない。これは、酸素不要群ではアウトカムが悪い傾向があるためであり、その期間は発症から中央値6日(3~10日)であった[4]。酸素投与開始時にデキサメタゾンを使用する場合は、抗ウイルス薬であるレムデシビルとの同時併用が望ましい可能性があるが[5]、宿泊療養施設や外来ではレムデシビルは使用できないため、現実的にはデキサメタゾンの単独使用になるだろう。繰り返しになるが、酸素需要がない状況で、発熱が持続しているなどの理由でデキサメタゾンを使用してはならない。なお、デキサメタゾンが用意できない状況であれば、デキサメタゾン6mgと等力価のプレドニゾン40mg日、メチルプレドニゾロン32mg/日を使用してもよい。また、糖尿病と診断されないまま糖尿病を抱えた人もおられ、その場合にはステロイドの投与により高血糖が顕在化することもある。ステロイド高血糖は夕方にみられるため、場合によっては夕食前の血糖を測定することも考慮する。高血糖がみられる場合は経口血糖降下薬(低血糖になりにくいメトホルミンなど)も使えるようにしておくとよいかもしれない。バリシチニブはJAK阻害薬で、関節リウマチにも使用される。ACTT-2試験[6]やCOV-BARRIER試験[7]が行われており、前者ではレムデシビルとの併用、後者では約80%にデキサメタゾン(レムデシビルは約19%)が併用されていた。バリシチニブを使用することにより、前者では全体で改善を1日早めるという結果で、後者は呼吸状態の増悪を止める効果はないが、死亡率は下げられるという結果を示した。安全性はいずれも比較群と比べて遜色なかった。ただし、COV-BARRIER試験のサブグループ解析では、高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)と非侵襲的換気療法(NIV)を用いた群で有意に死亡率が低下したものの、こうした介入を必要としない、肺炎のある酸素投与なし群や酸素投与あり群ではいずれも有意な低下はみられなかったことから、宿泊療法施設の患者は対象とはなりにくいだろう。サブグループ解析でありインパクトは弱いものの、推奨される域には達していない。バリシチニブは内服薬であり外来でも使用しやすいというメリットはあるものの、多くのガイドラインでは知見の豊富さから注射薬のトシリズマブをより推奨している。この見解は、今後変わる可能性がある。また、これまではレムデシビルと併用した場合にのみ臨床効果が期待できるため、それが使用できないセッティングではバリシチニブも使用できないと考えられてきたが、COV-BARRIER試験ではレムデシビル非投与群でも臨床効果が認められたため、この見解は今後変わる可能性がある。 商品名パルミコートである。大規模なPRINCIPLE試験[8]は、65歳以上もしくは合併症を有する50歳以上の入院していない患者もしくは疑い例に対し、ブテゾニド800μg、1日2回、14日間を投与して、28日目までのCOVID-19に関連した入院と死亡をプライマリーエンドポイントとして通常治療と比較した。結果は、発症から中央値6日で使用され、プライマリーエンドポイントでは有意差は出なかったが、自己申告に基づく回復までの期間はブテゾニド投与群で2.94日短縮された。使用に関連する副作用は認められなかった。この結果からは積極的に使用を推奨するものではないが、宿泊療養施設に入所した比較的中高年齢のCOVID-19患者で、背景に合併症があるなどでステロイドが使用しにくい場合などでは、使用することを考慮してもよいだろう。 シクレソニドも気管支喘息の治療薬で、SARS-CoV-2に対する「抗ウイルス活性」や症例報告[10]に基づいて日本で多施設非盲検RCTが実施され 、無症状・軽症患者に対する増悪抑制効果と安全性が検討された。入院8日目以内の肺炎増悪割合を評価したところ、介入群の方が対症療法群に比べて肺炎の増悪が有意に多かった[11]。サイズの小さな研究ではあるが、シクレソニドの投与は推奨されない。 8つのRCTを含む軽症から中等症のCOVID-19患者に対するファビピラビル治療のメタ解析[9]の結果、ファビピラビル使用は、入院7日後の症状改善率は高いが、14日後のそれは同等、その他ウイルス排除は早めない、呼吸不全/ICUへの入室/死亡は減らさない、という結果であった。どの研究もサンプルサイズが小さく、投与量、投与期間も異なるため、質の高いメタ解析ではないが、現時点ではファビピラビルの使用は推奨されない。大規模なRCT(COLCORONA試験[10]やRECOVERY試験[11])でプライマリーエンドポイントである入院や死亡の減少というアウトカムは出なかったが、COLCORONA試験でPCR陽性者に限ると、有意な死亡の減少はなかったが入院の減少を認めた。 ただし、両試験ともに有意に下痢が多かった。現時点においては使用を推奨する積極的なデータは乏しいと考える。言わずと知れた、日本で開発された糞線虫などの抗寄生虫薬である。In vitroでSARS-CoV-2に対して効果が示されたため、多数のRCTを含む研究で臨床効果が検討された(小規模であり、研究デザインや1回投与量、投与期間はまちまち)が、結果はさまざまで、その後のメタ解析[12]でも有効性を確認できなかった。現段階では使用を推奨できない。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(商品名デプロメール)である。動物実験で抗炎症作用を認めることから、COVID-19において発症から7日目以内に介入群でフルボキサミンを100mg、1日3回まで、15日間内服を行う臨床試験が行われた[13]。フルボキサミン投与群で15日以内の重症化が有意に少なかったが、Nが少なく(合計152人)、脱落も多い(20%)研究であり、現時点でフルボキサミンの有効性を結論付けるまでには至らない。それぞれの治療薬は前述した通りであるが、軽症から中等症患者のCOVID-19患者に対しては対症療法を行う。病院から往診薬を持参する場合の薬剤セットの例を表3に示した。アセトアミノフェン(商品名カロナール)10mg/kg頓服または定期内服。鎮咳薬としてデキストロメトロファン1~2錠を1日3回、あるいはリン酸コデイン2g/回(デキストロメトロファンで効果がないときに追加する場合)。去痰薬としてカルボシステイン錠1日3回を使用。食欲低下、下痢症状のため食事摂取不良となる患者は多い。水分摂取を励行し、場合によっては補液も検討する。COVID-19による皮疹の形態はさまざまで、ウイルス疹としてよく見る麻疹様の発疹、蕁麻疹、水痘様の水疱性の発疹、四肢末端のしもやけ様の色調変化(COVID toe)、網状皮斑などがある[14、15]。その他にも内服薬による薬疹が鑑別に挙がる。COVID-19による皮疹であれば経過観察やステロイド軟膏などで対応し、薬疹が疑われる場合には薬剤の中止も検討する。療養している患者は、COVID-19に対する恐れや憤り、今後の見通しが分からないことによる不安など、さまざまな思いを持って過ごしている。治療により劇的に改善が得られるすべがあるというわけではなく、こうした不安などに対する丁寧な説明やコミュニケーションは、ある意味、薬剤の処方よりも大きな役割があるとも言える。筆者が実際に受けた質問と、その回答例を挙げておく。A1-1.モノクローナル抗体療法なしの場合:2回目は、ファイザー社製ワクチンの場合3週間、モデルナ社製ワクチンの場合4週間の間隔を空けて接種します。隔離期間が終了した際に接種時期がくれば接種すればよいですし、間に合わなければずらすとよいでしょう。目安としては、1回目から6週以内に2回目を接種することとなっています。A1-2.モノクローナル抗体療法ありの場合:モノクローナル抗体療法を受けているため、次の接種までに90日の間隔を空けることになります。A2.すぐに再感染することはありませんが、次第に免疫が弱くなります。3か月以降になると再感染することがあります。発症してから3か月までに接種したらよいと思いますし、接種機会が限られていることを考えると、なるべく早く接種した方がよいと思います。A3.患者さんは感染して免疫がついているので、 たとえ家族の感染が判明したとしても再び感染しないため、退院直後の時点では濃厚接触になることはありません。また、体調が良ければ仕事に復帰しても大丈夫です。A4.感染性は10日以内になくなるとされていますが、一部の人はその後に免疫の反応で再度悪くなり、肺炎を発症し、酸素が必要になることがあります。ステロイドという免疫を抑える薬剤を使用して治療するなどします。発熱や息切れが出てくる場合には、かかりつけ医や保健所などに(地域のルールに従って)連絡してください。また、発症後90日以上経過すると免疫が低下して、再び新たに感染する可能性もあります。そういう意味でも、ワクチン接種は罹患後にもお勧めします。A5.COVID-19の場合、発症してから3か月以上症状が持続することもまれではなく、特に倦怠感、味覚・嗅覚障害、息切れが多いです。他には、頻度は下がりますが、脱毛、微熱、うつや気分の落ち込み、頭痛、集中力・思考力の低下、筋力低下などがあります。急性期に重症度が高かった人ほど症状が長く続くという報告[16]もありますが、急性期に軽症であった人でも長引くことはまれではありません[17]。自宅に帰った後に何らかの症状が出た場合には、かかりつけ医や保健所などに(地域のルールに従って)相談するとよいでしょう(日本語の総説[18]参照)。宿泊療養施設でのCOVID-19対応は、社会的・医学的に必要な隔離を病院よりも観察方法やマンパワーの限られる療養施設で行っているため、増悪した場合には病院に入院させる必要がある。また、それが困難な状況では、与えられた条件下で、患者に最適な医療行為を行う必要がある。COVID-19は感染症だが、皮疹や不眠、精神的な症状、長期の後遺症といったプライマリケア的側面が大いにあり、単に解熱剤や鎮咳薬を処方するだけで対応できるものではない。宿泊療養施設に滞在する方々が少しでも安心・安全な時間を送れるように、本稿を役立てていただければ幸いである。【References】
1)診療の手引き検討委員会: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き, 第5.2版, 2021.
2)NIH: What’s New in the Guidelines, COVID-19 Treatment Guidelines, 2021.
3)Weinreich DM, Sivapalasingam S, Norton T, et al: REGN-COV2, a Neutralizing Antibody Cocktail, in Outpatients with Covid-19.
デクマックス(デキサメタゾン)は有効成分デキサメタゾン含有のヒト用ステロイド剤です。 ..
期待のかかるワクチンだが、その予防効果は完全ではない。インド洋の島国セーシェルでは、人口の6割が接種を受けたにもかかわらず感染者が急増した。そのため、新型コロナの治療に特化した薬の開発が待たれているが、エボラ熱の治療薬候補として開発された「レムデシビル(商品名ベクルリー)」など、既存の薬が転用されてきた。ただ、既存の薬では、本来の用途よりも多く摂取する必要から副作用のリスクが高かったり、点滴薬の…