静脈内注射:デキサメタゾンとして1回1.65〜6.6mg、3〜6時間毎; 2). 点滴静脈内 ..


女性は男性に比べ催吐リスクが高いことが知られている(→参照)。本邦の呼吸器領域と婦人科領域における制吐療法の第II相試験の報告では,同じカルボプラチンを用いても,アプレピタントを含む3剤制吐療法を用いた場合,全期間嘔吐完全制御割合は,呼吸器領域では8割程度であるのに対し,婦人科領域では6割程度であった。また,婦人科領域の悪性腫瘍でカルボプラチンを用いる際に,第1世代5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンのみを用いた群に比べ,これらにアプレピタントを加えた群では,「“食事や水分も摂れない強い悪心”がない」と「5日間嘔吐なし」の割合がそれぞれ有意に高かった。ただし,副次評価項目として制吐効果をみた研究であり,2,3 日目にはデキサメタゾンが用いられていないという制限がある。


健康成人男子 10 名に、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム(デキサメタゾンとして 20mg) ..

アプレピタントとデキサメタゾンの併用もしくはアプレピタント単独投与の遅発性嘔吐に対する有用性もNCCN ガイドライン2017 や,レビューで示されている。個々の臨床試験では,中等度リスクに対するアプレピタントを含む3 剤の効果をみたランダム化比較試験がある。現在は高度リスクに分類されるAC 療法が約半数含まれている試験であるが,AC 療法以外の中等度リスクにおいても一次評価項目である「5 日間嘔吐なし」の割合が有意にアプレピタント群で高かった。ただし,これはサブグループ解析である点に注意が必要である。わが国でも,二重盲検ではないことに留意する必要があるが,オキサリプラチンベースの抗がん薬を用いる大腸がん症例において,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用療法にアプレピタント/ホスアプレピタントの上乗せ効果を,全期間および遅発期における嘔吐制御割合で証明した第III相ランダム化比較試験(SENRI 試験)の報告がある。さらに,AC 療法を除外した中等度リスク対して第1 世代5-HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロン,1~3 日目),デキサメタゾン(1日目のみ)の2 剤併用群に対してホスアプレピタント併用の効果を見たランダム化比較試験がある。7 割以上の患者においてカルボプラチン,オキサリプラチンを含むレジメンが使用されていた。ここでは対照群のオンダンセトロン(1~3 日目),デキサメタゾン(1日目のみ)の2 剤併用群に比べて,主要評価項目である完全嘔吐制御割合が3剤併用群で有意に高かった(77.1% vs. 66.9%)。

5-HT3受容体拮抗薬もしくはデキサメタゾンとの併用は,各単独療法と効果に差はなく,費用対効果において5-HT3受容体拮抗薬の有用性は疑わしいとされている(パロノセトロンはこの検討に含まれていない)。しかし,肝炎などでデキサメタゾンが使用できない場合は,5-HT3受容体拮抗薬を用いることもある。さらに遅発性嘔吐におけるパロノセトロン単独投与の有用性をdolasetron との比較で明らかにした第III相ランダム化比較試験の結果もあり,遅発性嘔吐に対するパロノセトロン単独使用は,現時点ではオプションの一つと考えられる(なお,ここでいう単独療法とは遅発性嘔吐に対するものであり,急性嘔吐に対する薬物療法に関しては を参照されたい)。5-HT3受容体拮抗薬と副腎皮質ステロイドは制吐効果,QOL 改善効果において同等であると報告した第III相ランダム化比較試験もある。MASCC/ESMO ガイドライン2016,ASCO ガイドライン2017 では,中等度リスク抗がん薬による遅発性嘔吐に対して,前述したパロノセトロンとデキサメタゾンの併用療法が推奨されている(参照)。

香港衛生署が医薬品成分 (デキサメタゾンなど) を含む製品に注意喚起

【参照】 2015ASCO 総会で報告された乳がんに対するアントラサイクリン系抗がん薬とシクロホスファミドを含むレジメンに対するデキサメタゾン/ホスアプレピタント併用下でのグラニセトロンとパロノセトロンの比較を行ったわが国の第III相ランダム化比較試験(WJOG6811B 試験)では,主要評価項目である遅発性悪心・嘔吐の完全制御割合において両群間に有意差は認められなかったが,二次評価項目ではパロノセトロン群が遅発期において有意に悪心を抑制した。

またMASCC のガイドラインでは,①NK1 受容体拮抗薬を使用しない場合はステロイドを3日間,②NK1 受容体拮抗薬を使用する場合はステロイドを1 日間使用すると謳われているが,①Aapro らの論文では,NK1 受容体拮抗薬を使用しない場合でも,パロノセトロンを併用するという条件下でsteroid sparing が可能であると報告されており,②に関しては,2~3 日目のステロイドは2~3 日目のアプレピタントと同等であるという報告もあり,元となるエビデンスの背景や条件に注意が必要である。本邦におけるsteroid sparing に関する報告でも,パロノセトロン併用下の報告や,アプレピタントとパロノセトロンの2 剤併用下など条件が異なるため留意する必要がある。

関連成分デキサメタゾン (dexamethasone) 抗炎症作用が強く、作用の ..

アントラサイクリン+シクロホスファミド併用(AC)療法においてアプレピタントを使用しない臨床試験のエビデンスから,2 日目以降のデキサメタゾンの上乗せ効果は証明されていない。さらにステロイドの副作用を減ずる目的で,AC 療法に対する2~3 日目のステロイド使用を行わないsteroid sparing という投与法は,ステロイド通常使用に対する非劣性が海外の第III相ランダム化比較試験で示されている。本邦でも,アプレピタント(またはホスアプレピタント)を併用した第III相試験において,AC療法を含む高度リスク抗がん薬に対するsteroid sparing が可能であることが示された14)。ただし使用された5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンのみであることに留意する必要はある。したがって,AC 療法においては,steroid sparing は選択肢の一つとなる(→ 参照)。

第1 世代の各5-HT3受容体拮抗薬の制吐効果に差はないとされているが,わが国で行われた高度リスクの抗がん薬投与に対する,第2 世代の5-HT3受容体拮抗薬パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群とグラニセトロンとデキサメタゾンの併用群の制吐効果を検討した第III相ランダム化比較試験において,パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群が有意に遅発性嘔吐を抑制したことが示されている(参照)。また,高度リスクの抗がん薬投与に対するパロノセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群と,グラニセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群の制吐効果の比較を行った第III相ランダム化比較試験(TRIPLE 試験)が報告され,主要評価項目ではないがパロノセトロン群が遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示された

デキサメタゾン静注9.9mg 1V(Day1)デキサメタゾン経口8mg(Day2~3)

ランダム化比較試験やプールドアナリシスの結果では,デキサメタゾン4~8 mg 経口投与(2~3 日目)とNK1受容体拮抗薬であるアプレピタント80 mg 経口投与(2~3 日目)の併用がデキサメタゾン単独より有用であった。この2 剤併用は,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用に比べても有意に遅発性嘔吐を抑制しており(21% vs.36%,p<0.001),ASCO ガイドライン2017,MASCC/ESMO ガイドライン2016 で推奨されている。

ASCO ガイドライン2017 によれば,遅発性嘔吐は,程度としては軽度なものが多いが,急性嘔吐の対処が不十分なときに起こりやすいとされる。治療としては副腎皮質ステロイド(経口デキサメタゾン)が推奨されており,メトクロプラミドや5-HT3受容体拮抗薬とも併用される。しかし,デキサメタゾンに加え5-HT3受容体拮抗薬を併用しても制吐効果の増強は得られない。さらに,急性嘔吐を認めた場合にはこれら2 剤を併用しても効果は不十分であるとされているため,抗がん薬の催吐性リスクや患者の状態に応じていずれか一方の使用にとどめるべきと思われる。


デキサメタゾン標準品 Dexamethasone Standard

基本的に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン6.6~9.9 mg を静注(8~12 mg を経口)の2 剤併用とするが,一部の抗がん薬(カルボプラチン,イホスファミド,イリノテカン,メトトレキサート等)を投与する場合にはアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与の併用が推奨され,その際にはデキサメタゾンを減量(静注: 3.3~4.95 mg,経口: 4~6 mg)する(→参照)。また,わが国では400 例を超えるオキサリプラチン投与患者に対する第III相ランダム化比較試験が行われ,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下において,アプレピタント/ホスアプレピタント群がコントロール群より全治療期間,特に遅発期の悪心・嘔吐の制御に優れることが示された

[PDF] <ジオトリフ錠> 重篤な副作用一覧(PMDA報告症例)

NCCN ガイドライン 2015 では,アプレピタントの代わりに多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンをパロノセトロンとデキサメタゾンと3 剤併用で用いるオプションが示された。さらに同2017では,新たにアプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加えるレジメンも提示された。これらは,シスプラチンとAC療法を含む高度リスク抗がん薬投与に際し,オランザピンが,パロノセトロンとデキサメタゾン併用下においてアプレピタントと同等であることが示された第Ⅲ相ランダム化比較試験や,アプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加える有用性が示された第III相ランダム化比較試験の結果を受けている。ASCO ガイドライン2017 でもオランザピンを加えた4剤併用が推奨療法として追加された。オランザピンはわが国でも複数の臨床試験が行われた。オランザピンは公知申請により2017 年6 月から,他の制吐薬との併用において成人では5㎎ を1 日1 回経口投与(患者状態により最大1日10㎎ まで増量可能),最大6 日間を目安として先発品と一部の後発品で保険下にて使用が可能となった。本邦における推奨用量,使用方法については未だ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる。慎重投与すべき患者としては,糖尿病患者ならびに高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者であり,使用に際しては副作用の傾眠や血糖上昇に十分注意する。高齢者への投与も慎重に行うべきである。作用点が重複するドパミンD2 受容体拮抗薬ドンペリドン,メトクロプラミド,ハロペリドール,リスペリドンなどとの併用は勧められず,また,睡眠薬との併用には注意を要する。投与量に関してはランダム化第Ⅱ 相試験ではあるが,高度リスク抗がん薬投与に対し3剤併用に加えたオランザピン5 ㎎ と10 ㎎では遅発期の悪心・嘔吐の制御において同等であったとの報告もある

GEM投与日にデキサメタゾン注6.6mg+5-HT3拮抗薬1A点滴静注

NK1受容体拮抗薬であるアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾン9.9 mg 静注(12 mg 経口)の3 剤併用が推奨される。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2 剤併用に比べ,アプレピタントを加えた3 剤を併用することで制吐作用の著しい改善が示されている。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬(→ 参照)は,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,薬剤間またその投与経路によって効果に大きな差はなく,用量や投与回数の影響を受けないことから,抗がん薬投与開始前に必要量を単回投与とする。第2 世代5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンは,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,急性嘔吐の予防効果は他薬剤と同等であるが,遅発性嘔吐の予防において優れている(→ 参照)。デキサメタゾンの用量(→ 参照)については,第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬との2 剤併用では13.2~16.5 mg を静注(16~20 mg を経口)とされてきたが,アプレピタントとの併用では,アプレピタントがCYP3A4 を阻害することによりデキサメタゾンの濃度-時間曲線下面積(area under the concentration-time curve; AUC)が増加するため,3 剤併用では9.9 mg 静注(12 mg 経口)に減量する。ただし,副腎皮質ステロイドが抗がん薬として投与されるCHOP 療法などではレジメン内のステロイドは減量してはならない。アプレピタントの投与期間は3 日間が推奨される。ホスアプレピタントはアプレピタントの水溶性を向上させたリン酸化プロドラッグであり,静脈内投与後に体内の脱リン酸化酵素によって速やかに活性本体であるアプレピタントに変換される。ホスアプレピタントはオンダンセトロン,デキサメタゾンとの3 剤併用でアプレピタントとの同等性が示されており,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下での抗がん薬投与30 分前,150 mg の単回使用が推奨される。ただし,副作用として注射部位痛/発赤/血栓性静脈炎の頻度が高いことに留意すべきである。

本剤はサリチル酸誘導体の腎排泄と肝代謝を促進し、血清中のサリチル酸誘導体の濃度が低下する。 抗凝血剤 · ワルファリンカリウム

軽度リスクの経口抗がん薬に対して,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では,制吐薬3 種類(5-HT3受容体拮抗薬,デキサメタゾン,ドパミン受容体拮抗薬)を単剤で使用することが勧められているが,最小度リスクに対する制吐薬の予防的使用は推奨されていない。一方,NCCN ガイドライン2017 では,軽度・最小度リスクの経口抗がん薬を含めて,悪心・嘔吐が生じた際にメトクロプラミド,プロクロルペラジン,5-HT3受容体拮抗薬などの連日投与(必要に応じてオランザピンやロラゼパムを併用)が推奨されている。しかし,経口抗がん薬に対する制吐薬の比較試験がないため,これらの推奨される制吐療法の信頼度は低い。ただし,これらの経口抗がん薬の有効性のエビデンスを示した比較試験のプロトコールをみると,Grade 2 の悪心・嘔吐が発現した場合にはおおむね支持療法を行うかまたは休薬し,支持療法によってコントロールできない場合には,投与量を一段階減量する,さらにGrade 3 の悪心・嘔吐が発現した場合は,投与量を一段階減量することが一般的である。したがって,がん薬物療法のエビデンスを示した臨床試験のプロトコールを参考に,日常臨床で使用されている薬剤を使用するほか,食事の工夫,カウンセリングなどの支持療法を実施し,コントロール不良の際は休薬し,抗がん薬を一段階減量して再開するという原則を守り,Grade 3 以上の悪心・嘔吐を発現させず,Grade 2の悪心・嘔吐が継続しないように内服を継続することが求められる。

前回の8月号では、ワルファリンの投与量や休薬について掲載しました。今回は ..

以前よりわが国では,経口抗がん薬のうちフッ化ピリミジン薬の使用頻度が高く,大腸がんにおけるUFT/ロイコボリン,カペシタビン,胃がんにおけるS-1,肺がんにおけるUFT は比較試験により術後補助薬物療法の有効性が示されている。また,切除不能再発胃がんや大腸がんに対しても,S-1 やカペシタビン,UFT/ロイコボリン,大腸がんにおけるTAS102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)は,ガイドラインで推奨されている治療の一つである。これらの経口抗がん薬は単回での催吐性リスクは少ないが,連日内服による消化器症状がある。

・レナリドミド服用中、患者のリスクに応じてアスピリン腸溶錠、エドキサバン ..

現在, 抗がん薬の副作用である悪心・嘔吐の評価方法としては, CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Event) v4.0-JCOG が用いられているが,これは制吐療法の評価方法ではない(→)。従来のわが国の制吐療法における臨床試験では,悪心・嘔吐が「ない」,「我慢できる」から,「ほとんど食べられない」といったチェック項目を患者に提示して個々の治療効果を示してもらうなどの方法がとられていた。最近の臨床試験では,がん薬物療法施行後0~120 時間の完全制御割合,0~24 時間の完全制御割合(急性),24~120 時間の完全制御割合(遅発性)などが評価項目として用いられている()。しかし,医療者は過小評価の傾向が指摘されており,悪心・嘔吐の予測がどの程度できているかの評価も重要である。また, 患者自身による主観評価にあたる Patient-Reported Outcome (PRO) の重要性も認識されてきており, がん臨床試験における患者の自己評価に基づき, 有害事象評価の正確性と高い精度のグレーディングを追及したツールとしてPRO-CTCAEが公開されてきており(), 日常診療として客観的評価とどのようにして関連づけて評価していくか等に関する検討が必要になるであろう

薬物相互作用 (27―がん化学療法における制吐剤の 薬物 ..

注1: 英語表記は本邦未承認。
注 2: 「 ※」は海外のガイドラインには記載がないが,わが国では使用可能な薬剤。

デキサメタゾン[デカドロン],ヒドロコルチゾン[コートリル],プレド ..

経口抗がん薬における催吐性リスクについては,MASCC/ESMO ガイドライン2016 を参考に作成委員会内でコンセンサスを確認し, それ以外の薬剤については承認申請時のデータ,代表的な臨床試験の報告をもって に示すリスク分類とした。わが国で使用頻度の高いテガフール・ギメラシル・オテラシル(S-1)では,悪心の発現頻度は3~54%,Grade 3/4 は0.2~7.1%,嘔吐の発現頻度は14~28%,Grade 3/4 は1.2~4.3%と報告されており,軽度リスクに分類した。トリフルリジン・チピラシル(TAS-102)は悪心と嘔吐の発現頻度がそれぞれ48%,28%であることから中等度リスクに,アレクチニブは悪心の発現頻度が13%であり軽度リスクに分類した(→)。レンバチニブでは悪心の発現頻度が41%, Grade 3 が2.3%であり, 中等度リスクに分類した。