空山基のセクシーロボットとコブラのレディってどっちが先なんだろ.
空山:誰にも教わっていないけど、ラジコンのヨットを作るために買ったエアブラシを使ってみたら、グラデーションもベタ塗りもできた。誰もやっていなかった技法だから、メディアでは十八番的な感じで紹介されたけど、実際はそんなことないし今となっちゃほとんど使ってないんだよ。グラデーションの中で透明感や反射を見せるのはエアブラシではできないから、一度も使っていない作品すらある。毎回マスキングしながらエアブラシするよりも、筆で描いた方が早いからね。
空山基 sorayama *コブラ蛇*アラビアン*ビンテージ90s
空山:でも10年は甘いかもしれない、1000年だ。私は、ガンジス川の畔にいた仙人に「3回生まれ変わったら悟りが開ける」って言われたから、300年は生きなきゃと思っている。ただ、アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti、20世紀を代表するスイスの彫刻家)は「1000年生きれば、満足のいく作品が一つくらい作れる」って言っていたから、彼は最低でも私の3倍は才能があるんだ。だから10年はひよっこすぎる(笑)。本当に素晴らしい彫刻や絵画って、人に迷惑がかかろうが、違法であろうが、なりふり構わず手に入れたいって思われるじゃない?こんなの作家からしたら冥利で、それくらいのオーラを放たせたいよ。
空山:“絵に文字の援軍はいらない”って考え。作品に名前を一切付けず、目や唇といった粘膜質を強調するために、ほかの肌を光らさないようにマットにすることは頭の中にあるね。あとは、視線を誘導する戦略的な描き方をしている。映画やドラマといった映像はカメラマンが見せたいところを切り撮るけど、私の作品は舞台と一緒で、主役を立てるためにほかの人が目立たないようにすることを絵の中でやっている。誰もが一番最初に目が向いてしまう、性欲が掻き立てられるところをスタートにして、その後に見ていくうちに付け焼き刃の知性がにじんでいくイメージ。今だと、作品を買ってくれるような人にだけウケるコアなネタとして、作品にラテン語を忍ばせているよ。
空山基 sorayama *コブラ蛇*アラビアン*ビンテージ90s(その他) ..
空山:20代前半の頃にハイパーリアリズム(克明に写実する絵画動向)が世界的に流行し、無機的で非人格な作品が評価されるから、普通の人は右から左に何も考えずに描いていた。でも私は写真から質感を出すための方程式を、自分の中で生み出した。生み出したというより、自分にとって普通のことをやっただけなんだよね。全てのことに通ずるけど、他人に何を言われようが、自分の居心地のいいスタイルを続けて、寄り道せずに最短距離を通せば個性になるんだよ。そうすれは、評論家たちが後ろから勝手に付いてきて振り返った時にも筋が通る。時代と添い寝して世の中に合わせたり、媚びたり、流行を追っかけたりすると、筋が通らなくなる。アートだけじゃない、ファッションも、スニーカーも、音楽も、全部に言えることで、「10年後もこれを続けているかい?」って聞きたいね。
空山:そうだね。中学生の時、前に座っていた女の子の白いブラウス越しに初めてブラジャーを見て、1時間は観察していたよ。哺乳類だからおっぱいが好きなのは当たり前で、その後に大好きなおっぱいを包んでいるブラジャーとかにも目覚めたのかな。
空山基 sorayama *コブラ蛇*アラビアン*ビンテージ90s
空山:サントリーとの広告の仕事がきっかけだね。最初は、映画「スター・ウォーズ(STAR WARS)」のキャラクターをそのまま借りて“サントリーウイスキーホワイト”の広告を作る予定だったらしいけど、費用と手間の問題からオリジナルを作ることになって、私に声が掛かった。それで「スター・ウォーズ」っぽく宇宙に浮いてる岩の上に、男性のロボットと犬のロボットが乗ってる絵を描いたら評判が良くて、駅に掲示されたポスターは盗まれたほどだったらしい。それからロボットの女性を描くようになり、犬のロボットは20年後くらいに“アイボ(aibo)”になったってわけ。その直後、たまたま最初の“セクシーロボット”を描いてる時に、玄光社が出してる雑誌「イラストレーション」の“How to draw”ってコーナーが取材に来た。どうやら勝利の女神は、私のことを放って置けないらしいの。
空山:常に森羅万象から吸収してるけど、特に人間だと思う。レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)とか葛飾北斎とか、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)とか。その時代に違法とされていたものや非道徳的なことでも興味を推し進めた人たちだね。ダ・ヴィンチはバレたら死刑なのに死体を解剖していたけど、これって自分の興味を満たす内的報酬のためだけに動いていた。ダイビング器材のアクアラングを開発したジャック=イヴ・クストー(Jacques-Yves Cousteau)は、開発途中に事故で息子を亡くしたのに、それでも開発を続けた。素直に自分の興味があることを満たすためだけに生きているような人は、本当に羨ましいね。お袋に「なんで女性の体を描くんだい?富士山とか花を描けば良いのに」って何度言われたことか(笑)。
空山基 sorayama *コブラ蛇*アラビアンナイト*ビンテージ90s*額装 - その他.
空山:全く、嘘ばっかり描いてる(笑)。関節や骨を意識はしているけど、肌の柔らかさや脂肪を金属に置き換えているだけで、ユニバーサルジョイントにもなっていないから、立体化しようとすると現場の人は泣いちゃう。動かないものを動く風に描いているからこそクリエイティブで、デザインは性能の表現の一つ。機能だけを求めると機械っぽくなってしまうから、センスのある嘘で作れる人じゃないと立体化はできないね。2021年の「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(Art Basel Miami Beach)」に出したセクシーロボットは、完璧じゃないけどいい出来だったよ。文学を映画化する感覚に似ていると思ってくれればいい。
空山:自分のことをアーティストだと思ったことは一度もないし、気恥ずかしくて名乗るなんて無理だよ。照れ隠しでエンターテイナーなんて言うこともあるけど、肩書きには何の意味もない。呼びたいように呼べばいいし、自分がしたいことがあったらそれになる。というか、私は自分のために好きな絵を描いているだけで、人のために描いているつもりはないんだ。生活習慣病みたいなもので、描き出したら止まらないのよ。嫌な仕事も楽しくなっちゃう、悲しい人間なのさ(笑)。
今回、一番見たかったのは、空山 基さんのセクシーロボットです。 空山 基さん ..
空山:すでにフリーランスとして食べていけるくらい稼いではいた。でも学生結婚したときの義父が広告業界のお偉いさんで、当時は今よりも“フリーランス=プータロー”のイメージが強かったから「娘婿がフリーランスなんて恥ずかしい」ってことでADKを紹介してもらった。義父の顔を潰せないから入社して、1週間で胃潰瘍になるほど辛い日々だったけど、社会のシステムや生きていくすべは勉強できたね。それでも会社という組織には慣れず、2年後に再びフリーランスに転身したんだ。
でもコブラのレディも空山基のパクリと言われても仕方ないレベルだしなぁ? 2018-10-03 16:23:02
空山:いろいろなところにイラストを提供していて、その一つが「月刊プレイボーイ」だね。その頃は田名網敬一さんがアートディレクターで、“困った時の空山頼み”って言葉が生まれるくらい一緒に仕事をしていた。「月刊プレイボーイ」で小さなイラストを2つ描けば、それだけでADKの月収を超える恵まれた時代だったよ。
空山基 sorayama *コブラ蛇*アラビアン*ビンテージ90s その他
空山:映画と印刷媒体だけ。自分で求めないといけない飢餓状態で、常に渇望していたね。でも、20歳で上京してメディアに載っていた本物たちに会ったら自分のイマジネーションの方がはるかに上で、「こんなものを針小棒大に取り扱っていたのか」とビックリした。数年ぶりに再会した初恋の人にショックを受けたり、妄想のセックスが一番楽しかったりするのと一緒。いつだって現実はどうってことないんだよ。
コブラの活躍を描く痛快SFアクション「コブラ」。本作「コブラ」が連載開始40周年を迎えるにあたり、漫画家寺沢武一の、「コブラ ..
空山:30年くらい前で、ニューヨークかどっかのTシャツ屋だったと思う。今はないアメリカの男性向け雑誌「ペントハウス(Penthouse)」で10年くらい絵を描いていたから、それを見て声をかけてきたんじゃないかな。「ペントハウス」に初めて載った絵は、見開きで“セクシーロボット”風の女性がソファの上で用を足しているものだったの。当然、抗議の電話が編集部に殺到したんだけど、そのうち読者からいろんなシチュエーションで女性が用を足してる写真が送られてくるようになって、それを載せる定期コーナーができちゃった(笑)。それくらい私の絵には影響力があるんだ。でも「ペントハウス」に載る前に画集「セクシーロボット」を世界にばら撒いていたから、それも理由だと思う。ちなみに、“セクシーロボット”って俺が言い出したんじゃなくて、この画集の出版元の編集長が名付けたんだよ。
寺沢武一 コブラ40周年記念展 -COBRA the Illumination->開催
空山基(以下、空山):生まれは四国の愛媛県今治市だね。当時の四国は文化が果つるところだったから、芸術系の人は一切いなくて、貧乏で産業もない閉鎖された城下町。若い頃は文化の話が誰にも通じないことが嫌で嫌で、なんとか脱出したかった。話し相手を見つけたかったけど、東京に出ても、外国に行っても、同じ空気が吸えて波長の合う人はそうそういなかったね。
寺沢武一 コブラ40周年記念展図録 COBRA the Illumination
その他にも、空山先生はの犬型ロボット「」のデザインも空山 基先生がされている。
コブラの作者がポプテ作者・大川ぶくぶにキレる!「礼儀知らずな人
どうしようもないんだけどさ、私の絵って布の上にプリントすると再現度が低くなってしまう。でも、Tシャツブランド「グラニフ(GRANIPH)」のプリントは今までで一番上手かったね。話が来た時に「できるわけないでしょ」って話をしたら気持ちに火が付いたみたいで、何回刷り直したか分からないくらいサンプルを作って、仕上がった作品を見た時は思わず「すげーじゃん」って声が漏れた。相手も誇りを傷付けられるのが嫌だから闘争心が燃えて、結果としていいものができ上がる。これがコラボの醍醐味じゃない?
[1-3話]スペースコブラ(1982) 寺沢武一の大人気コミック ..
当時、思春期真盛りの少年に与えたエロティックな衝撃は紛れもなく、空山先生の方が上だったw
コブラの相棒の女性型アーマロイド。 その体はライブメタル(生命金属)という超合金から成っている。
空山:私はファッションのセンスがないから、南塚真史(アートギャラリーNANZUKAのオーナー)が探してくれるか、長年のファンからの連絡だね。昔から画集を世界にバラ撒いていたおかげで、小さい頃に影響を受けた人たちが実力を持った大人になってラブコールをしてくるのさ。コラボしたステラ・マッカートニー(Stella McCartney)は、学生時代の教科書が私の画集だったらしい。
まあ、ここまで話して、今更、空山 基って誰?って思う人や…
それとね、空山 基先生にもある遺伝子が入っている可能性が有るんだよ…
それが「空山 基 (そらやま はじめ)」先生なの。
空山:ステラ同様、キム・ジョーンズ(Kim Jones)も私のファンだったみたいで、渋谷で開催していた個展に急に来たんだ。次の日、スタジオに来て一緒にうなぎを食べている時に、「パリからわざわざ来たってことは、腹に一物を抱えてんだろ?」って聞いたらコラボの話だった。ショーまで半年しかないのに、12mのスカルプチャーも作らなきゃいけないから時間はギリギリだったよ。キム本人も「まさか半年で完成するとは思わなかった」って言ってたくらいだ。「ディオール」の時に使われている絵は昔の作品で、ロゴだけ新しく描いた。巨大スカルプチャーはアルミ製で、もともとベースとなる立体作品があったおかげで読み込んで作ったから、間に合ったね。巨大な作品は純粋にオーラを帯びるから、見る分には気持ちよかったよ。お年寄りの方は、直接見たら拝んでしまうんじゃない?(笑)。
空山基 *コブラ蛇*アラビアンナイト*ビンテージ90s*額装
今はその延長線上にあるCGでイラストを描いているけど、空山先生と出会は無ければ、今のCGもやってないかも知れない。
空山 基さんのセクシーロボット
結局、自分も「エアーブラシ」で作品を作り出したのも空山先生が切っ掛けだった。