[PDF] デキサメタゾン COVID-19 小児患者に対する治療薬としての位置付け
バリシチニブ(Baricitinib)は、関節リウマチに対する治療薬として、2017年よりオルミエント ®という名前で日本国内でも市販されていた飲み薬です。
体内で炎症が起こると、サイトカインという細胞間の情報伝達を行うタンパク質がリンパ球などから放出され、これが様々な細胞の表面にある受容体というタンパク質に結合することで、細胞の中に炎症のシグナルが伝わります。
バリシチニブは、受容体から細胞の中に信号を伝える際に必要な、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素を阻害することで、サイトカインによって細胞で炎症が起こることを抑える働きを持っています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を重症化させる、いわゆるサイトカイン・ストームに対して有効な薬剤として、米国では昨年11月より抗ウイルス薬レムデシビルとの併用治療が緊急使用許可されていました。
日本では、イーライ・リリー社によって昨年12月にCOVID-19の治療薬として承認申請が行われ、4月21日の厚生労働省の審議会で承認されました。
COVID-19の治療薬としては、レムデシビル、デキサメタゾンに続く3剤目となります。
今回は、承認の決め手となったと思われる、国際二重盲検試験(ACTT-2)の成績を報告した論文を読み解いてみたいと思います。
論文が掲載されたのは、The NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE 誌の2020年12月11日号です。
原文(英語)や図表は、下のリンクからお読みいただけます
Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19
2)サイトカインストームは、遺伝子の転写因子である NF-κB と STAT3 の協調作用 ..
新型コロナ感染症の軽症・中等症向けに開発された抗体カクテル療法に用いるカシリビマブとイムデビマブ、ソトロビマブに加え、既存薬の転用も進み、中等症・重症にはエボラ出血熱の治療薬であるレムデシビル、酸素投与が必要な中等症・重症には重症感染症や間質性肺炎などの治療薬であるステロイド剤のデキサメタゾン、JAK阻害薬(免疫の過剰反応サイトカインストームを抑制する)バリシチニブが国内で承認。
ニュースなどで多くの方がご存じかと思いますが、たとえ新型コロナウイルス感染症を発病しても、ほとんどの患者さんは風邪のような症状をへて軽症のまま治ってしまいます。
しかし、一部の患者さんでは重症化して酸素吸入が必要になったり、更に悪化して人工呼吸器やECMOで生命を維持する治療が必要になったり、最悪の場合亡くなってしまったりします。
このような重症化が起こるメカニズムとしては、ウイルスの感染をきっかけに免疫システムが、いわゆる「サイトカイン・ストーム」を起こし、制御不能な炎症が肺を始めとした臓器に生じてしまうという説が有力です。
このため、新型コロナウイルス感染症の治療としては、①発症早期にはウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を、②サイトカイン・ストームで重症化した場合には炎症を制御する薬剤を、という二段構えの戦略が必要になります。
新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として国内承認された薬剤のうち、昨年5月に承認されたレムデシビル(ベクルリー®)は①の働きを持つ薬であり、昨年7月に承認されたデキサメタゾンは②の働きを持つ薬剤でした。
今回国内承認されたバリシチニブ(オルミエント ®)は②の働きを持つ薬剤ですが、デキサメタゾンと比較してどちらが有効性・安全性で優れているかは今の所わかっていません。
米国の疾病対策予防センター(CDC)のガイドラインでは、②の薬剤としてはデキサメタゾンを優先し、副作用の問題(高血糖など)でステロイドホルモンが使用できない症例では、バリシチニブの投与を検討するように記載されているようです。
一方、日本国内では、昨年末あたりからバリシチニブの保険適応外での使用が認められ、重症のコロナウイルス感染症の患者さんに投与が開始されていましたが、
①肺炎の陰影がCTスキャンで確認され、酸素飽和度が低下し始めるとレムデシビルの投与を開始
②悪化して酸素吸入が必要な状態になると、レムデシビルにデキサメタゾンを追加
③デキサメタゾン投与でもさらに悪化すると、上記2剤にバリシチニブを追加
という形で、デキサメタゾンとバリシチニブのどちらかを選択するというよりは、両剤を併用する医療機関が多いようです。
どちらが治療戦略として最適なのか、明らかになるにはしばらく時間が必要かもしれません。
近々改定されるであろう、厚生労働省の「COVID-19診療の手引き」では、本剤がどのような位置づけで記載されるのか興味があるところです。
第4波の到来による医療機関の逼迫が毎日のように報道されている今日このごろですが、バリシチニブの正式承認によって、投与する医療機関が増加→重症患者のICU滞在日数が短縮→重症病床の逼迫状態が改善、という流れが多少なりとも生じることを期待したいと思います。
COVID-19重症者における中和抗体およびサイトカイン産生量の解析
【緒言】小児において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は軽症と考えられているが、年長児においてはCOVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C)のように、COVID-19に罹患数週間後に川崎病類似症状、心機能低下や消化器症状を呈する重症例も報告されている。その病態はサイトカインストームと血管内皮障害が深く関与していると考えられている。今回サイトカイン放出症候群(CRS)を呈した生後1か月のCOVID-19症例を経験したので報告する。
【症例】日齢44の男児。発熱と哺乳不良、頻回の下痢を主訴に受診し、第2病日に入院した。入院時は発熱と頻脈以外に明らかな異常所見はなく、入院時の血液検査では、末梢血にてHbが低下しており、生化学では低Na血症、肝逸脱酵素の上昇、低コレステロール血症、プロカルシトニン(procalcitonin: PCT)の上昇を認めた。胸部レントゲンでは両肺野に明らかな浸潤影はなかった。心臓超音波検査でも心嚢液貯留や心機能の異常は認めなかった。第3病日も高熱が持続し、血液検査では肝逸脱酵素の上昇と血小板数の低下、Dダイマーの上昇を認めたため、高サイトカイン血症の可能性を考え、デキサメタゾンの全身投与を施行した。その後解熱し、症状は軽快し心機能障害はなく第11病日に退院となった。入院翌日に採取した検体で施行したサイトカインプロファイル解析では、neopterin (72 nmo/L, 基準値
【考察】COVID-19の重症化はCRSと密接に関連していると言われており、本症例は生後44日の早期乳児であるが第3病日でCRSを発症していた。CRSを疑い3病日からデキサメタゾンを投与したことで、心機能障害や多臓器不全といった重症化はなくCRSを沈静化させることができたと思われた。
【結語】新生児や乳児のCOVID-19感染症においてもCRSをきたすことがあるため、重症化を防ぐために早期にステロイド治療を検討する必要がある。
ニューウェーブ教育・研究スペイン風邪でも有効だった「麻黄+石膏」 新型コロナウイルスは世界で感染の再拡大が深刻で、日本も楽観できない状況が続いています。期待の持てるワクチン接種開始のニュースも伝えられていますが、安全性が確認されて世界中に行き渡るにはまだまだ時間がかかりそうです。こうしたコロナ治療のニュースで取り上げられるのはほぼ現代西洋医学ですが、コロナ感染が最初に広まった中国では、治療に漢方薬を取り入れた例も報告されています。内科医であると同時に漢方医学の専門医・指導医でもある広島国際大薬学科の中島正光教授は6月に学術誌「漢方の臨床」で、「新型コロナウイルス肺炎に対する漢方治療案」の論文を発表。1918年から1920年に起こったパンデミック「スペイン風邪」=*注1=に対して日本で大変有効だったとされる漢方治療をもとにした治療案を提案しています。太古から感染症治療に取り組んできた歴史がある漢方医学が、今回の新型コロナ治療でも有力な選択肢であることについて中島教授に聞きました。不快なコロナウイルス 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と同じコロナウイルスによる感染症「重症急性呼吸器症候群=SARS」が、2002年から2003年に中国から世界に広がりました。10%近い高い致死率(65歳以上は50%)で、私は呼吸器専門医、感染症専門医で、広島大学病院のSARS対策委員長をしていました。もし広島県で発症した場合には広島大学病院に搬送され、私が治療することになっていました。幸い疑い患者が搬送されたのみで、日本で発症者は出ませんでした。 今回の新型コロナウイルスはSARSほど致死率は高くなく、無症候性の感染者も多いですが、急速で強い肺の炎症を起こし、サイトカインストーム(免疫反応の暴走)、血管炎、血栓症を伴う重症肺炎を発症することがある不快なウイルスです。重症患者の多くは発症から短期間で急速に悪化します。決定的な治療法はいまだになく、肺炎を伴う重症例は致死的で、人工呼吸器やECMO(体外式模型人工肺)による治療が必要です。患者の胸部CT画像の特徴として8~9割にすりガラス陰影(GGO)が見られることが挙げられます。間質性肺炎に多く見られる特徴で、ウイルスにより肺内に免疫反応、炎症反応が起こっていると考えられます。そのため免疫抑制や炎症抑制に効果のあるデキサメタゾンなどのステロイド薬の投与が広く行われています。漢方医学の可能性 この新型コロナに対してもちろん漢方による治療も試みられ、中国では診療ガイドラインも出されています。漢方医学は中国が起源で2000年近い歴史がありますが、人類を繰り返し襲ったさまざまな感染症の治療がその大きな役割でした。その膨大な知見が積み重ねられ、感染症以外の一般の病気にも治療の幅を広げていったのです。そのため西洋薬で治らない疾患、症状が漢方で治療できる例もたくさんあるのです。実際、私が最近診た皮膚病(難治性の乾癬)の患者は、西洋薬で何十年も効果がなかったのに、処方した漢方薬の効果で2カ月で症状がほぼ消えました。このような漢方の有効例は頻繁に経験します。確かに感染性肺炎になると*注1【スペイン風邪】=1918年から1920年にかけ猛威を振るった全世界的に大流行したH1N1亜型インフルエンザ。第1次世界大戦でヨーロッパに渡った米軍兵士から世界に急速に流行しパンデミックには3回の感染拡大があり、第2波の被害が最も大きかった。全世界の3人に1人が感染し、死者は5000万人(日本では39万人)とも推定される。09FLOW | No.91 | January, 2021■ 肺のすりガラス陰影の病理組織=中島教授撮影GGO(すりガラス陰影)の病理組織像例肺胞壁など間質に炎症細胞浸潤が強い漢方薬で炎症を軽減なかじま・まさみつ ■山口県立中央病院(現:山口県立総合医療センター)病理部副部長、川崎医科大学呼吸器内科講師、米国テキサス大学感染症科、広島大学医学分子内科学(旧第2内科)講師などを経て、2005年広島国際大学保健医療学部教授。2017年から現職。博士(医学)。総合内科専門医、漢方専門医・指導医、呼吸器内科専門医・指導医、感染症専門医、アメリカ胸部疾患学会フェロー、元病理専門医、その他アレルギー免疫、腫瘍の研究に従事。兵庫県出身。広島国際大学 薬学部 薬学科中島 正光 教授漢方医学と感染症との闘いは2000年の歴史その知見を新型コロナにかんせん
*: 又は相当量(経口投与を含む)。高用量ステロイド投与による副作用を軽減するために、治験責任医師の評価に基づ
小児ネフローゼ症候群は年間発症率が10万人に5人程度と比較的稀な疾患であり当院では年間数例が初発あるいは再発で入院加療を要する。当院では、大阪府のSARS-CoV-2陽性者数の増加に合致して第1波(2020年3月~5月)は初発2例、再発4例、第2波(2020年7月~9月)は初発2例、再発5例、第3~4波(2020年10月~2021年5月)は初発2例、再発8例と1年2ヶ月間で初発6例、再発17例が発症した。1996年10月から2020年2月までの23年4ヶ月間を通常期、2020年3月から2021年5月までの1年2ヶ月間をアウトブレイク期とすると、初発に関しては通常期が0.11人/月、アウトブレイク期が0.4人/月、再発に関しては通常期が0.41回/人年、アウトブレイク期が1.45回/人年であり初発再発共に患者数が約3~4倍増加した(χ二乗検定:p
精神的ストレスが小児ネフローゼ症候群の再発原因となるという報告がある事、更に東日本大震災後にネフローゼ症候群発症が増加した報告が存在することから、COVID-19の大流行による休校、外遊びの制限等が日本人小児に多大な精神的ストレスをもたらしたことが今回のネフローゼ症候群の超過発生と関与した可能性が示唆される。
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ミクスオンライン 2020/09/03 04:53
仏サノフィは現地時間の9月1日、IL-6阻害薬・ケブザラ(一般名:サリルマブ)について、重症の新型コロナウイルス感染症患者を対象に、日本を含む国際共同第3相臨床試験で主要評価項目を達成しなかったと発表した。試験は、入院する新型コロナ重症患者420人を対象に実施。通常治療に加え、ケブザラ、もしくはプラセボを投与した。ケブザラ200mg群161例、ケブザラ400mg群173例、プラセボ群86例にわけ、有効性・安全性を検討した。
その結果、入院期間の短縮や、7カテゴリーで示す臨床状態の2ポイント以上の改善の時間について、「統計学的な有意差は認められなかったが、数値の減少傾向は確認された」としている。入院期間は、有意差はないものの、2~3日短縮する傾向が認められた。
重大な有害事象の発生率は、ケブザラ群で26~29%、プラセボ群で24%だった。致死的有害事象は3つの治療群ともに、約10%。新型コロナによる肺炎を含む感染症は、ケブザラ群で11~13%、プラセボ群で12%だった。
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ミクスオンライン 20/7/30
ロシュは7月29日、新型コロナウイルス関連肺炎による重症入院患者を対象に欧米で実施するアクテムラ(一般名:トシリズマブ)の欧米で実施した第3相臨床試験「COVACTA」の結果について、主要評価項目を達成しなかったと発表した。主要評価項目に据えた臨床状態の改善や死亡率についてのいずれも、対照群であるプラセボに対し、有意差を示せなかった。アクテムラは、ロシュの子会社である中外製薬が自社創成した抗体医薬で、新型コロナウイルスに起因するサイトカインストームへの有効性が期待されていた。
試験は、重症の新型コロナ関連肺炎による成人入院患者450例が対象。標準治療にアクテムラを上乗せすることでの有効性・安全性を検討する目的で実施された。主要評価項目には、7カテゴリーで示す4週目時点の臨床状態を据えた。副次評価項目は、死亡率、人工呼吸器、集中治療室に関する変数。
主要評価項目の4週目の臨床状態の改善については、アクテムラ群はプラセボ群に対し、統計学的な有意差は認められなかった(p=0.36、オッズ比:1.19、95%CI:0.81-1.76)。カギとなる副次評価項目である、4週間後の死亡率は、アクテムラ群19.7%、プラセボ群19.4%で、有意差は認められなかった(p=0.9410)。
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なおステロイドの有効性については下記を参照のこと。
WHO Recommends Corticosteroids for Severe COVID-19 After Positive Study Results Physician's First Watch 2020/9/3
The World Health Organization recommends systemic corticosteroids to treat patients with severe and critical COVID-19.
死亡率低下で“治せる病気”に…既存のステロイド薬投与で治療の効果
糖質コルチコイド(Glucocorticoid、グルココルチコイド)の薬は炎症や自己免疫疾患を治療するため広く処方されており、最近ではCOVID-19(SARSコロナウイルス2型感染症)の重症患者の治療にも用いられている。COVID-19は、発熱や息切れなどの症状から、多臓器不全などの重い合併症への急速に進行する。重症患者は「サイトカインストーム」(cytokine storm)を経験するが、このときにはもはやコロナウイルスに対する炎症反応を抑えることはできず、サイトカイン(炎症の分子メッセンジャー)の異常な産生がさらなる合併症を引き起こしてしまう。臨床試験では、糖質コルチコイド受容体に結合する強力な抗炎症薬であるデキサメタゾン(dexamethasone)を低用量で投与することにより、COVID-19入院患者の死亡率が低下したことが示されている。
感染しても約80%は無症状か軽症で経過するが、高齢者を中心に約15%は重症肺炎となり、約5%は致死的な急性呼吸促迫症候群(ARDS: Acute Respiratory Distress Syndrome)になる。また血管炎や血栓症、脳梗塞、心筋障害などを合併するとともに、急性腎機能不全などの多臓器不全を合併することが多い[7] [8]。また、心臓血管疾患、高血圧、糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などの基礎疾患や、加齢、肥満や喫煙などが重症化リスク要因として報告されている。
軽減するため、骨髄中の白血病性芽球の割合が50%超、又は末梢血中の
サイトカインストームに対する基本的治療はデキサメタゾン,エトポシド,シクロスポリンAによる免疫化学療法であるが,それ以外の免疫抑制薬も使用され,サルベージ療法としての造血細胞移植についても解説する.サイトカインストームにおいてキーとなるサイトカインの働きを直接阻害するような生物製剤や分子標的薬も近年数多く開発され,病態に応じて使い分けることによって,優れた治療効果が期待される.
惹起される炎症性サイトカインの過剰産生(いわゆるサイトカインストーム)による全身的 ..
●免疫抑制・調整薬(ステロイド〈デキサメタゾン〉、バリシチニブ、トシリズマブ)……中等症以上に用いられます。サイトカインストームを抑制する目的で用いられます。
[PDF] 新型コロナウイルス感染症 サイトカイン制御の試み(薬物療法)
一方、日本漢方の古方派が重用している「傷寒論(しょうかんろん)」は、著者である張仲景(ちょうちゅうけい、150~219)が親族のおよそ2/3を疫病で失ったことから記した「処方集」であり、「傷寒」つまりは感染症に対する処方集だとされます。
現在、COVID-19に対する有効な治療薬は確立されておらず、抗ウイルス薬としてアビガンやレムデシビルの応用やサイトカインストームを抑止するためのデキサメタゾン投与が試されているところですが、中国や日本の漢方医がどのように考えているのかを知ることも重要ではないかと思い、調べてみました。
また,保険適用ではないが,サイトカインストーム型の病態形成に重要であるサイトカインや関 ..
新型コロナウイルス感染症では、サイトカインストームをミュートすることで、死亡率を低下させることができる。重症患者では、ステロイドであるデキサメタゾンを使用した大規模試験で、死亡率を改善することが示された。
多くの細胞に感染する過程でサイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫の ..
非投与群40.7%)。これらの結果から、世界保健機構(WHO)も重症の患者さんではステロイド投与を強く推奨するようになったのです。 2) トシリズマブ(アクテムラ®)サイトカインストームで中心的な役割を果たすのは、「インターロイキン6(IL-6)」というサイトカインであることが次第に明らかになりました。そしてそのIL-6を抑える薬剤がトシリズマブ(商品名:アクテムラ®)です。この薬剤は日本で開発され、もともと関節リウマチやキャッスルマン病の治療に用いられていました。2021年にイギリスから報告された臨床試験では、酸素療法を要する4,116人の参加者において、トシリズマブ投与群のほうがしなかった群に比較して有意に死亡率が低かったのです(投与群29% vs.
ステロイド系抗炎症薬であるデキサメタゾンの投与が、酸素供給が ..
非投与群33%)。大半の患者さんでは、ステロイドも投与されていることから、トシリズマブはステロイドに上乗せして投与することによって治療成績改善が期待できると考えられています。 重症化のリスク因子それではどのような人が重症化しやすいのでしょうか。現在判明しているものとして、高齢者(65歳以上)、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、固形臓器移植後、妊娠後期などがあります。ただし、それだけでは説明できない部分もあり、遺伝子解析なども含めて現在も世界中で研究が進められています、 [参考資料]新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き(第5.2版)Horby P et al., Dexamethasone in hospitalized patients with Covid-19 – Preliminary Report.
例えば、免疫抑制作用のあるステロイドはサイトカインストームが合併した場合に.
サイトカインストーム:感染症や薬剤投与などの原因により,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群・多臓器不全にまで進行する状態のこと(出典:実験医学Online、羊土社)
デカドロン(デキサメタゾン)(製造販売業者:日医工株式会社)ほか ..
過剰な免疫反応を抑える薬として承認されたのがデキサメタゾンやバリシチニブなどです。ウイルスに感染すると免疫反応が起こりますが、時に過剰な免疫反応が引き起こされ、全身に炎症反応が広がることもあります。デキサメタゾンやバリシチニブは全身の炎症反応(サイトカインストーム)を抑え、体にダメージを与えてしまうのを防ぎます。
○ COVID-19患者では、サイトカインストームや血管内皮障害などにより血栓のリスクがある。
体内に侵入したウイルスに対し、が過剰に反応し暴走してしまう「ストーム」という現象が起きることがある。新型コロナではサイトカインストームで肺炎が起き、死に至ることがある。デキサメタゾンはサイトカインストームを抑制する。
[緊急寄稿]新型コロナウイルス間質性肺炎の検証 初発と再発では
多剤併用群間で迅速に比較し検証する.初めに胸部X線ないし胸部CT画像において軽症から中等症レベルの肺炎の所見・徴候を有するCOVID-19 陽性患者を対象に,シクレソニド、カモスタットの2剤併用療法をおこない、プラセボと酸素飽和度の改善、胸部画像所見の軽快及びSARS-CoV-2 の陰性化までに要する時間を主要評価項目として,アダプティブ単盲検ランダム化多施設共同比較試験で検証する。次に、胸部X線ないし胸部CT画像において軽症から中等症レベルの肺炎の所見・徴候を有するCOVID-19 陽性患者を対象に,ファビピラビルにシクレソニド,カモスタットを追加した時の治療効果が追加しない場合と比べて上回ることを,酸素飽和度の改善、胸部画像所見の軽快及びSARS-CoV-2 の陰性化までに要する時間を主要評価項目として,アダプティブ単盲検ランダム化多施設共同比較試験で検証する。最後に、胸部X線ないし胸部CT画像において重症レベルの肺炎の所見・徴候を有するCOVID-19 陽性患者を対象に,ファビピラビルにシクレソニド,カモスタットを追加した時の治療効果レムデシビル単剤と比べて上回ることを,酸素飽和度の改善、胸部画像所見の軽快及びSARS-CoV-2 の陰性化までに要する時間を主要評価項目として,アダプティブ単盲検ランダム化多施設共同比較試験で検証する。特に、内服治療のみでどのレベルの肺炎合併例においても奏効する場合、点滴治療と異なり、医療従事者の患者との接触を減らせるメリットが得られるため、そこから得られる研究結果は有効である。
サイトカイン・ストームが起こらない。一見,症状は乏しいが,ウイルスが体内で ..
新型コロナウイルス感染症の重症例では、サイトカインストームと呼ばれる現象が見られ、それが重症化を起こすことが主な要因とされてきました。
サイトカインはウイルスや細菌感染に対して、生体防御を担う生理活性物質です。マクロファージやリンパ球などの炎症細胞や上皮細胞、血管内皮細胞などから、分泌されるタンパク質で、特にTNF-α・IL-6は強い炎症反応を示し、炎症性サイトカインと呼ばれています。
新型コロナウイルス感染症の重症例では、これらの炎症性サイトカインが大量に放出され、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)・播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)・急性循環不全(ショック)さらには多臓器不全に陥ることが、わかってきました。
これらの症例には、デキサメタゾンなどのステロイド薬が著効を示すことが明らかにされてきました。難攻不落と思われていた、新型コロナウイルス感染症の重症者がステロイド薬で治療できることがわかってきたのです。
世界保健機関(WHO)も9月初め、新型コロナウイルス感染症重症患者へのステロイド薬の推奨を決めました。最近の日本の大学病院の集計では、新型コロナウイルスに感染した入院患者の40%以上にステロイドが使われています。そして、世界各国の新型コロナウイルス感染症の治療でも同様にステロイド薬がせきを切ったように使われ始めました。
私はこのステロイド薬の使用が世界各国の最近の新型コロナウイルスによる死亡者の減少に深く関係していると思います。
ステロイドが効いたのはサイトカインストームが病態の本質だから。だからIL-6阻害 ..
COVID-19の重症患者は集中治療が必要になる場合があります。集中治療では多くの機械(人工呼吸器や点滴のルートなど)がつながっており、動くこともままならならないことが多くあります。また集中治療室では1日を通してモニターの音が鳴っていて、時間の流れが分かりにくい環境となっています。また家族や友人との面会もできないことがあります。このような環境下に置かれたことによる精神的肉体的ストレスによって、さまざまな症状が出現します。集中治療後症候群はCOVID-19以外の症例でも長期の集中治療を余儀なくされた場合に起こる一般的な病態です。重症COVID-19の後遺症にも関わっている可能性は高いと思われます。