「老齢マウスを使って加齢にともなう記憶力低下の原因を解明」 -メラトニンの脳内代謝産物AMKに記憶力低下の改善薬として期待-


1)老齢になると記憶力が低下するのは、海馬(記憶に重要な脳の部位)におけるN1-acetyl-5-methoxykynuramine(AMK)の低下が原因の一つであることを初めて明らかにしました。
2)AMKを1回投与すると長期記憶(記憶の固定)が誘導され、その時海馬において記憶形成に重要なタンパク質のリン酸化が誘導されることを明らかにしました。
3)老齢マウスと若齢マウスの海馬において発現している遺伝子を網羅的に解析した結果、長期記憶に関連する遺伝子群が老齢では有意に低下していることを明らかにしました。
4)この成果は、AMKが人においても加齢に伴う記憶力低下の原因の一つであり、AMKを基盤とした新薬の開発が、低下する記憶力の改善や認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の改善薬につながる可能性を示すものであります。

【研究成果の意義】
本研究成果から、人においても老齢になると海馬におけるAMK量が低下し、そのことにより記憶力の低下が引き起こされている可能性が考えられます。メラトニンは海外では睡眠を促すサプリメントとして広く利用されており、人において副作用がほとんどないことがわかっています。高齢者の生活の質(QOL)を向上させるためには、記憶力低下の改善は重要な課題であります。AMKあるいはAMKを基盤とした新薬の開発は、加齢性の記憶障害や認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)における記憶力改善薬として期待されます。さらに人以外でも、ペットの高齢化への対処や警察犬や盲導犬の学習時の利用が考えられ、今後の展開が楽しみな物質であります。


松果体で合成される睡眠ホルモンメラトニンを産生する CBA/N マウスは

Gタンパク質(ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質)共役受容体(GPCR)ヘテロマーの形成により、シグナル伝達の多様化が可能になり、薬剤選択性が向上することが大いに期待される。これらのオリゴマー化事象に関する研究のほとんどは、異種発現系で実施されており、in vivoでの検証は行われていない場合が多いため、GPCRヘテロマー化の生理的意義が疑われている。メラトニン受容体MT1およびMT2は、培養細胞に発現させると、ホモマーおよびヘテロマーとして存在する。われわれは、メラトニンMT1/MT2ヘテロマーが、マウスの桿体光受容体の光感受性に対するメラトニンの作用を仲介することを示した。メラトニンのこの作用には、ヘテロマー特異的ホスホリパーゼC/プロテインキナーゼC(PLC/PKC)経路の活性化が関わっていた。さらに、MT1-/-またはMT2-/-マウスや、光受容細胞に機能性MT1/MT2ヘテロマーの形成を妨げる非機能性MT2変異体を過剰発現しているマウスにおいては、この作用が消失した。本研究は、網膜機能におけるメラトニン受容体ヘテロマーの必須の役割を立証しているだけでなく、GPCRヘテロマー化の生理的重要性をin vivoで裏付けている。したがって、MT1/MT2ヘテロマー複合体は、光受容体の機能を向上させるための特異的な薬理学的標的となる可能性がある。

実際にメラトニンの抗酸化作用によって、マウスの寿命を延ばす効果や神経細胞を守る効果があることが報告されています[3]。

マウスにおける松果体メラトニン合成の制御機構に関する遺伝学的及び生理学的研究

メラトニンを妊婦に投与した場合、胎児の脳を保護する可能性がある。マウス、ラットおよびヒツジを用いた動物実験では、メラトニンを妊娠中の母親に投与した場合、発育中の胎児の脳を損傷から保護する可能性が示唆されている。

強い抗酸化作用を有するメラトニンが、放射線照射に伴う口腔粘膜障害に対し、予防効果あるいは治療効果を有するか否かにつき検討を行い、われわれはマウスに対する放射線照射の結果から、メラトニン投与により放射線性口腔粘膜障害が軽減できる可能性を見出した。また、そのメカニズムにメラトニンによる放射線性アポトーシス誘導の抑制、細胞増殖が関与していることを発見した。

老齢マウスの脳内メラトニンについて | 日本大学薬学部研究紀要

Spain 一般講演 老齢ラットにおける SCN からの 松本 安代 他3 九州大・薬・薬理 VIP 遊離に対するメラトニンの影 名 響 一般講演 ラット視交叉上核の電気活動の光 渡辺 和人 他1 獨協医大・生理 反応性 名 一般講演 視交叉上核における2つの長期増 西川由希子 他3 九州大・薬・薬理 強現象 名 一般講演 ラット視交叉上核分散細胞培養に 本間 さと 他4 北海道大学医学部生理学第一講座 おけるペプチドリズム:培地条件 名 によるリズムアンカップリング 一般講演 交替勤務者における直腸温波形の 小山 恵美 他4 松下電工株式会社電器開発研究所 解析 ―非交替勤務者との比較及 名 び高照度光刺激の影響について― 一般講演 病院看護婦達の交代勤務睡眠障害 長坂 明子 他5 山梨医科大学付属病院看護部 の実態調査 名 一般講演 中期型の深夜勤務に従事する看護 松本 三樹 他4 旭川医科大学精神科神経科 婦の睡眠(その1) ― 名 polysomnograph を用いた検討― 一般講演 大学生の睡眠習慣について 植田 俊幸 他1 鳥取大学医学部神経精神医学教室 名 一般講演 アルツハイマー病の生体リズムの 大橋 裕 他5 浜松医科大学精神医学教室 経時的変化 ―2症例の検討― 名 一般講演 メラトニンが有効であった非24 北島 剛司 他6 名古屋大学医学部精神医学教室 時間睡眠覚醒症候群の1症例 ― 名 治療前後のメラトニン、直腸温の 日内変動と睡眠構築の比較検討― 一般講演 慢性疲労症候群を呈した非24時 渋井 佳代 他4 東京都職員共済組合清瀬病院神経 間睡眠・覚醒症候群の1症例 名 科 一般講演 FFT を用いた血圧構成成分のリズ 許 鳳浩 他2 北里研究所 BI センター ム解析 名 一般講演 悪性腫瘍化学療法による自律神経 波多野 潔 他9 愛知がんセンター集中治療部 障害の定量的評価法 名 一般講演 本態性高血圧症における時間治療 河埜 功 他10 山梨医科大学第二内科 について ―imidapril を用いた 名 検討― 一般講演 高血圧患者の概日変動における生 奥谷 充章 他13 山梨医科大学第二内科 物学的零時刻設定について 名 一般講演 健康成人の生理機能の日内変動 橋口 剛夫 他2 帝京科学大学理工学部 名 一般講演 閉経前後の基準血圧女性における 李 兵紅 他10 山梨医科大学第二内科 血圧および心拍数の概日変動につ 名 いて 一般講演 血圧概日変動におよぼす身体活動 田草川正弘 他12 山梨医科大学第二内科 度の影響 名 一般講演 Circadian - hyper - amplitude 渡辺 尚彦 他9 東京女子医大第二病院内科I - tension (CHAT) の日差・週内 名 変動 一般講演 未治療本態性高血圧における血圧 岩崎 宏 他12 山梨医科大学第二内科 の Morning rise と左室肥大の関 名 係 一般講演 本態性高血圧患者の運動負荷時の 殷 東風 他10 山梨医科大学第二内科 血圧変動について ―Dipper と 名 Non-dipper との比較― 一般講演 健常者の血圧日内変動曲線の年代 林 博史 他7 名古屋大学第一内科 による位相差 名 一般講演 本態性高血圧における血圧概日変 望月 泰朗 他14 山梨医科大学第二内科 動の再現性と左室肥大について 名 一般講演 心拍変動の circadian rhythm、 大塚 邦明 他12 東京女子医大附属第二病院内科I 加齢、性差 名 一般講演 植込み型除細動器手術症例におけ 檜山 和弘 他5 日本医科大学第二外科 る心室頻拍と心室細動の発症と時 名 間的要因について 一般講演 メラトニン投与時の、ラット 中沢 和美 他3 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病 Gn-RH ニューロンの POSITIVE 名 院産婦人科 RESPONSE につい て 一般講演 ヨーロッパ産スズキ 飯郷 雅之 他4 聖マリアンナ医大解剖 Dicentrarchus labrax における 名 メラトニンの日周リズム 一般講演 魚類松果体でのメラトニン合成に 高畠 育雄 他2 島根大学生物資源科学部生物 おける概日リズムの季節変動 名 一般講演 ハトの眼球内メラトニン及びドー 足立 明人 他1 名大農、動物機能制御 パミンリズムの解析 ―マイクロ 名 ダイアリシス法による研究― 一般講演 ヒトのメラトニン産生量に及ぼす 松本 三樹 他4 旭川医科大学精神科神経科 外因性メラトニン投与の影響 名 一般講演 老化促進マウス (SMAP-8) の自発 柴田 重信 他4 早稲田大学・人間科学部・薬理 運動のサーカディアンリズムに対 名 する薬物の作用 一般講演 南極・日本における睡眠・覚醒リ 大日方一夫 他5 新潟大学医学部大1外科学教室 ズムの概年変動 名 一般講演 72時間の恒暗環境下における睡 林 光緒 他1 広島大学総合科学部 眠・覚醒リズム 名 一般講演 活動量の同時測定を利用した深部 内山 真 他5 国立精神・神経センター精神保健 体温リズムの Demasking の試み 名 研究所精神生理部 一般講演 ビタミン B 12 の生体リズム及び 小曽根基裕 他9 東京慈恵会医科大学精神医学教室 眠気に与える影響 名 一般講演 トリアゾラムがメラトニン分泌・

東京医科歯科大学は11月24日、メラトニンの代謝産物であるAMKがマウスの長期記憶形成を促進することを突き止めたと発表した。この研究は、同大教養部生物学教室の服部淳彦教授と松本幸久助教の研究グループが、上智大学理工学部の千葉篤彦教授との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Journal of Pineal Research」オンライン版に掲載されている。

メラトニンを合成できる実験用マウスを開発し、哺乳類においてメラトニンが時差ぼけの解消や日内休眠に関わることを明らかにした。

副作用は殆どなく、午前中の眠気が時に生じますが、重篤な副作用は報告されていません。この分野をリードしているイタリアのピエールパオリ博士はメラトニンを0.1mgから200mgの高用量まで投与した研究を行っているが、重篤な副作用を認めていません。実験的にマウスにメラトニンを300mgで二年間投与しても、問題となる変化がなかったと報告しています。

マウスにAMKを投与し物体認識試験を行ったところ、学習前(1時間前から)、学習直後および学習後(2時間後まで)に1回投与するだけで、24時間後の長期記憶が形成されると判明。いくつかの実験から海馬(記憶に重要な脳の部位)において、メラトニンはAMKに変換されること、またこのAMKは、形成された短期記憶が消失しないうちに作用することで記憶を固定し、長期記憶への移行を促進する物質であることが明らかになった。また、マウスも加齢によって記憶力は顕著に低下していくが、AMKは老年マウスで低下した記憶形成能力を改善することもわかった。今回の結果は、メラトニンには抗酸化作用による記憶障害の抑制効果がある一方、AMKに変換されて長期記憶を誘導する作用があることを示している。


メラトニンはマウス顆粒膜細胞の核、ミトコンドリア、細胞膜を酸化ストレス傷害から護る

これまでメラトニンによる寿命延長効果がしばしば語られてきましたが、本研究で用いたコンジェニックマウスでは寿命延長は確認されませんでした。また、メラトニンを合成できないコンジェニックマウスは合成できるコンジェニックマウスよりも早く成長し、繁殖効率も優れることが判明しました(図2)。一方で、情動や社会性に関する行動については大きな違いはありませんでした。

メラトニンによるポストコンディショニングは、マウス神経細胞においてメラ

(c)時差ぼけが解消するまでの日数を示したグラフ。メラトニンを合成できるコンジェニックマウスの方が早く時差ぼけを解消できた。

「老齢マウスを使って加齢にともなう記憶力低下の原因を解明」-メラトニンの脳内代謝産物AMKに記憶力低下の改善薬として期待-

(a)オス、メスともにメラトニンを合成できないコンジェニックマウスの体重は早く増え、早く成長することが分かった。

【成果】 妊娠期および非妊娠期のC3H/He マウス単離膵島において、メラトニン受容体 MTi 及び MT2

(b)コンジェニックマウスの繁殖率。メラトニンを合成できないコンジェニックマウスの方が高効率で妊娠し、仔の数も統計学的に有意に多かった。

その結果、メラトニンを飲んだマウスは飲まなかったマウスに比べて

次に、両方のコンジェニックマウスについて、さまざまな光条件下における活動のリズム(概日リズム[6]など)、寿命、体重、生殖腺の重さや繁殖効率、情動や社会性に関する行動を調べました。その結果、予想に反して、概日リズムに対するメラトニンの効果は顕著ではありませんでした。一方で、6時間の時差ぼけ[7]を人工的に与えると、メラトニンを合成できるコンジェニックマウスの方がより早く時差ぼけを解消することが分かりました(図1)。

実験的にマウスにメラトニンを300mgで二年間投与しても、問題となる変化がなかったと報告しています。 がんに対するメラトニンの基礎研究

これらの結果から、メラトニンを合成できなくなることは飼育舎内のマウスにとっては有利だったと考えられます。しかし、野生のマウスはメラトニンを合成できます。では、野生マウスにとってのメラトニンの重要性とは何でしょうか。

モデルマウスのSCGにおけるマクロファージの除去により、松果体支配神経の除神経は阻止され、生理的メラトニン分泌が回復した。 評価

松果体内や血液中のメラトニン量を測定したところ、メラトニンを合成できるコンジェニックマウスでは、夜間に多くのメラトニンが合成・分泌されていることを確認しました。また、メラトニンはメラトニン受容体に作用して機能を発揮することから、脳内におけるメラトニン受容体の発現量や分布を調べたところ、メラトニンを合成できるコンジェニックマウスとできないコンジェニックマウスで違いは見られませんでした。

東京医科歯科大学は、メラトニンの代謝産物であるAMKがマウスの長期記憶形成を促進することを突き止めたと発表した。

マウスには光周性はありませんが、繁殖には季節性があることや、メラトニン剤を投与した際には体温低下効果が見られることなどから、コンジェニックマウスを野外で経験すると考えられる食料不足の状態に置いてみました。すると、メラトニンを合成できるコンジェニックマウスは、冬眠に似た深くて長い低体温を示す日内休眠の状態になりましたが、メラトニンを合成できないコンジェニックマウスは浅くて短い休眠状態しか見られず、その結果、1週間の制限給餌後に体重が大きく減少してしまうことが分かりました(図3)。

[PDF] 122. 松果体メラトニンによる網膜の光感受性抑制機構の解明 池上 啓介

国際共同研究グループはまず、メラトニンを合成できるMSM/Msマウス[4]に注目しました。MSM/Msマウスは40年ほど前に作られたマウス系統で、現在も野生マウスが持つさまざまな特性を保持しています。このMSM/Msマウスを、メラトニンを合成できない一般的な実験用マウス系統のC57BL/6Jマウスと交配させ、生まれたマウスを再びC57BL/6Jマウスと交配させました。これを10回以上繰り返し、最終的にメラトニンを合成できるコンジェニックマウス[5]系統と合成できないコンジェニックマウス系統を樹立しました。

[PDF] メラトニンの代謝産物 AMKが長期記憶を促進する

(a)制限給餌中および前後における深部体温の変化の代表例。暗期(各12時間)を灰色の背景で示した。 メラトニンを合成できるコンジェニックマウスは日内休眠状態が見られた(下)、合成できないコンジェニックマウスでは浅くて短い休眠状態しか見られなかった(上)。

松果体ホルモンであるメラトニンの代謝産物 N1-acetyl-5-methoxykynuramine(AMK)を、学習前お

2010年の成果を手掛かりに、今回、国際共同研究グループはメラトニンを合成できる実験用マウスを開発し、メラトニンを合成できない実験用マウスと比較することでメラトニンの機能を調べました。

メラトニン(Melatonin)分析 ヒト/ウシ/その他実験動物等・測定対象

(b)1週間の制限給餌の前後の体重変化。メラトニンを合成できるコンジェニックマウスの方が、体重減少が有意に少なかった。

[PDF] Osaka University Knowledge Archive : OUKA

一方で、メラトニンをヒトやマウスに投与したときの効果については、数多くの研究報告があります。メラトニン剤は日本では2020年に承認され、「小児期の神経発達症に伴う入眠困難」への保険適用になっています。また、アメリカなどでは数多くのメラトニン入りのサプリメントがドラッグストアなどで販売されています。

#82086 Melatonin ELISA (RE54021) | 株式会社免疫生物研究所|IBL

本研究成果には三つの意義があります。一つ目は、メラトニンを合成できる実験用マウス系統を開発し、哺乳類におけるメラトニンの生理学的機能を精査したことです。その結果、過去に推定されていた機能について確認や否定をしただけでなく、日内休眠の制御というこれまで知られていなかった機能を明らかにしました。メラトニン剤には免疫系や骨の形成にも影響を与えることが知られており、今後はこれらについての解明も進むと考えられます。